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経理実践トレーニング 経営計画編 vol.1 無借金経営への道程 1 創業の理念を再認識しよう ここ数年間に、多くの中小企業が、銀行から借りられなくなるとノンバンクといわれる街の金融業者から借金をし、さらに家族や親類縁者から借りまくって挙げ句の果てに不渡り手形を出したり、経営者が夜逃げや自殺をするような悲惨な事例を多く見てきた。 こうした最悪の事態を未然に防止するには、もう一度原点に戻って「何の為に企業経営をしているのか」を見つめ直すことが最も効果がある。 私共の事務所ではお客様に「利益は社会貢献のバロメーター」と申し上げ続けている。 企業は仕事を通して社会に役に立っているからこそ利益が出て、継続することができる。厳しい言い方に聞こえるかもしれないが、経営者なら、利益が出ないということは、社会の役に立っていないことの現われだと、受け止めるくらいの心構えが必要である。この激変の時代に利益が出ないのは、その企業が時代の変化に追いついていない証拠だと認めざるを得ない。 経営者が働くことの意義を見失っているときは仕事もうまく行かず、当然利益も出せない。利益が出なければ資金繰りが悪くなる、資金繰りが悪化するとストレスから健康を害する。不健康な疲れた頭で考え、資金繰りの為に無理矢理受注し、挙げ句の果てに不渡り手形をつかまされる。そしてさらに業績が悪化するという悪循環が始まる。いくらリスケをやっても本業が儲からなければ、いつかは必ず倒産する。こんな状態でもし社長が病気で入院してしまったらこの会社は確実に倒産するだろう。 そんなときこそ創業時のお金も人も物も不足していたが、しかし希望に輝いていた時のあの熱い想いをもう一度徹底検証する必要がある。 清算貸借対照表を作ってみよう
その会社が実質的に誰のものなのかは、清算貸借対照表(図-1)を作ってみるとすぐに分かるし、挽回の余地の有無は、予想損益計算書で分かる。 この会社をこのまま継続しても社長の個人財産を担保として、利息をしっかり取っている銀行が儲かるだけで、信用だけを頼りに商売をしている客先や仕入先、借金をしている親戚や保証人になってもらっている友人など周囲に被害を拡大するだけになる。 この状態では社長が仮に100%出資して起した会社であっても、この会社はもう既に社長の会社ではない。この会社は債権者とりわけ銀行の為の会社だと言える。であるにもかかわらず、社長は自分の会社だと思い続け、必死になって支えているのが多くの破産状態に陥った企業の実態である。 こんな状態になったら早々に弁護士と相談し債権者に協力を要請し、債務の一部棚上げなどを含む再建計画を提示するのがむしろ当たり前である。それでも駄目ならすっぱりと諦めて、今の会社をたたんで再起に賭けたほうがどれだけ周囲にかける迷惑が少なくて済むか、計り知れないが、往々にして責任感の強い経営者ほど泥沼にはまりやすい。 社長自身がここのところの意識の切り替えができると、事態を解決するのに大いに役に立つ。 この原稿を書いている時点は1998年9月初旬だが、皆様のお手元に届くころにどのように事態が急変しているか推測することすら恐ろしい気持ちがする。 もうこれ以上中小企業に悲惨な事態を多発させたくないので、もしこの記事を読んで身の回りに該当しそうな人が居たら、「迷惑を最小限に留めるには頑張り過ぎないことだ」とあなたが一言救いの言葉をかけてあげてほしい。 そして全国組織を持っている中小企業家同友会(注1)には多くの力のある専門家(弁護士・税理士・公認会計士・中小企業診断士等)が所属し中小企業を支援しているのでぜひ一度相談してみるよう伝えて欲しい。 撤退の心構え 危機的な状態に陥った場合は、もう一度創業時の原点に帰り、会社を起したときに描いていた夢や理想を実現する為にこの苦難を背負っているのか否かを確認してみる必要がある。もし、借金が増え続け、当初の目的が達成できないのなら、つらい話だが、倒産を認めざるを得ない。債務超過になって挽回の余地が無くなったら、その会社は存在意義が無くなったといえる。 その時点が「ご破算で願いましては」の決断のときである。 しかし、戦争で一番難しいのが退却戦だと言われるように、企業経営で一番大変なのが事業を撤退することである。 他人に迷惑をかけずにいつでも会社を閉めることができたらこんな幸せなことはないと、どの経営者も望んでいる。無借金経営ならそれができる、だからこそ中小企業は無借金経営を目指さなければならない。 しかし緊急の場合にそんな悠長なことはいっていられないので、破産管財人をしている弁護士とのやりとりの中から私が経験的に学んだことをお伝えする。 第一には、債権者の中に、暴力団やその匂いのする金融業者などとの関わりができてからでは遅い、保証人や借金の相手先に親類縁者・従業員まで巻き込んでからではこれも遅い、そうした事態が発生しそうになったら専門家に事前に相談をすべきである。 また、どうしても会社を閉めざるを得なくなったら、ガソリンスタンドや文房具店など日常的な買い物のような小口の債権者はできるだけ無いほうがよい。まして従業員の給料の未払いが多額にあって回収できる見込みの売掛金がわずかしかない場合など、最後まで一緒に戦ってくれた従業員の明日からの生活まで滅茶苦茶にしてしまうのでそのような事態は絶対に起してはならない。 時代の変革期は”寅さん”になろう 今の時代は「どの業種が良いか」という考え方は当てはまらない。もし質問するなら「どんな経営の仕方が良いか」と聞き、我が社ならどのようにできるかと考えてほしい。 一寸先が分からない今は、商売の基本に戻り、現金を回収するまでは取引が完了しないと再認識するべきだ。その上で、頼れるものはお金ではなく、心の通った友人と日々健康に働ける身体が一番の財産であると再確認をしよう。 少なくとも日々の労働が無くて生活できるのが中産階級だと教科書では習ったはずなのに、マスコミの集計では多くの日本人は自分が中流だと思っているという。 日本の社会においては、大企業・中小企業を問わず社長も従業員もそのほとんどは等しく労働者なのだ、無論、自らが額に汗をして働いている中小企業経営者も中産階級ではない。 いささか話しはオカルト染みてくるが、経営者が日々健康に働けることに感謝をしそれを喜びに感じられると、そのとたんに事態は好転した事例を山ほど経験している。 この時代は明日もデフレが進行するか、或いはいきなりハイパーインフレが始まるか予測が難しい。こんな時こそ、誤った中産階級意識を捨て、その日暮らしの労働者諸君!フーテンの寅さんを見習って幸せを満喫しようではありませんか。 注1 東京都文京区大塚5−40−8天風会館5F 東京中小企業家同友会 TEL03−3947−3981FAX03−3947−3982 http://www.tokyo-doyukai.or.jp/ 中小企業家同友会全国協議会 TEL03−3943−0571FAX03−3943−0599 |
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