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JDL Avenue vol.15 1999年7月掲載
経理実践トレーニング
経営計画編 vol.5

無借金経営への道程 5


メカトロニクスの会社
 九州・福岡県古賀市にこの平成不況にも負けず過去22年間黒字経営を続けている西部電機という会社がある。
 同社は「メカトロニクス」「メカトロメーション」という言葉を作りだした会社としても知られている。
 同社は以下の三事業部に分かれており、メカトロ事業部では、同社独自の中間搬送をなくしモノレールスタッカと加工機械を直接結びつけることで飛躍的に工場内の作業能率を上げられるDIOシステム(Direct Input Output System)や、同様の技術を生かしスーパーやコンビニエンスストア等に発送される商品を完全に自動化した立体自動倉庫システム、高速オーダーピッキングシステム、さらにオートパレットチェンジャー等を扱っている。
 精密機械事業部では、世界唯一といわれる「断線点自動供給技術」を用い、前記のメカトロ技術を駆使した自動化で加工時間の短縮を計りサブミクロンの加工を可能にし、早さと精度を求めるワイヤ放電加工機械を製造し、また非球面加工においてもオングストロームの精度を誇る超精密NC旋盤も製造している。
 産業機械事業部ではバルブコントロールを製造し水道関係では70%のシェアを誇っている。
 以前この欄で業績の良い会社の条件の一つに挙げたように、もちろん工場内の整理整頓はびっくりするほど行き届いており、工場内が明るいのは物理的な明るさだけでなくそこに働いている社員全員から放射されている「気のエネルギー」を感じさせるそんな会社である。

優良企業にも苦難があった
 現社長の森徹郎氏は(株)安川電機の関連会社のYEデータから昭和56年に同社に赴任されたが、こんな立派な会社にも存続の危機を感じさせる苦難の時代があったという。その当時の逸話をお聞きする機会を得たのでご紹介しよう。
 その当時工場の中は暗く、汚く「工場の稼働率はどのくらいか」と訊ねても答えが返ってこなかった。そこで森社長は稼働率を測るのに平面・空間・作業時間の三要素で表現して見せ、その非効率さを分からせたという。
 暗い工場の中を少しでも明るくしようと「機械をきれいに掃除し、明るい色に塗るように」指示をしたが、いつまで経っても実行されないので、業を煮やしてペンキを持って塗り始めたら漸くそれを目の当たりにした工場の人々が動き出したという。
 とにかく何をするにも、できない理由を長時間かけて滔々と述べるのには閉口したという。その頃の状況を
<「ないない」ナインコード>
と名付けて次のように表現された。
1.ゆっくり のんびり 気迫がない
2.暗く 汚く 流れがない
3.時代の変化に関心がない
4.自分に落ち度欠点はない
5.管理者に自覚と物差しがない
6.故郷以外に青山(せいざん)はない
7.営業はご用聞きで売る気がない
8.ホップ、ステップでジャンプがない
9.総じてロマンと誇りがない
 これらのことは業績が低迷しているどの企業にでも当てはまるが、それを明確に指摘し、且つ強烈な指導力を持って良い方向へ引っ張ってゆくのは大変なことである。
 そこで森社長は、「できない理由コード」表を作成し、1〜13番の番号で答えさせたという。
できない理由コード

1.人がいない
2.予算がない
3.時間がない
4.設備がない
5.場所がない
6.協力がない
7.理解がない
8.経験がない
9.前例がない
10.名案がない
11.職務内容表にない
12.興が乗らない
13.やる気がない

13もの出来ない理由が示せるということは、それだけ出来る理由があるので「嘆くことはない、立派な決断力と創造力である。」と言って発想の転換を促した。その上社内には「すぐやれ!行動を通じて思考せよ!」など多くの標語を浸透させる教育を施した。それが功を奏し「できる方法」を考え、実行する体制が徐々に出来てきたという。

大切な幕賓と理念統一
 森社長のユニークなところは、「職場の明暗は自己の鏡」と常に自戒されご自身が信念を持って言い・行うだけでなく、社員に対する側面からの援助を実現するためには外部からのサポートが必要だと喝破し、外部の幕賓となる方を人、物、金の三分野にきちっと配置されているところである。
 その方々を活用するために「OUT&UP運動」を提唱されている。これは森社長の言葉を借りれば「従来のやり方ではあきまへんで!」という運動で、会社の中だけではなく外部の人の話を聞く機会を持つことの大切さを訴え、さらに左脳を使い論理的思考をするだけでは足りず、右脳を刺激する必要性を唱えている。
 具体的には「金」の側面で松下電器産業葛q員で松下電子工業叶齧ア取締役、ウェスト電気且ミ長を歴任された渡邊宏男氏を招き、事業部制・キャッシュフローなど「経営は経理なり」を全社に浸透させるために約10年にわたり指導を受け、「物」作りの面では、ロボット工学の第一人者であり、ロボコンの生みの親でもある森政弘博士の自在学講座を毎年数名ずつ受講させている。
 さらに「人」という側面では音楽家で潜在能力研究家の梅谷忠洋氏を招き、毎年地域住民も招いて新春クラッシクコンサートの開催などを通して発想力・創造力・行動力開発の指導を受けている。
 我々会計人のように外部から企業を見るものとって、業績が低迷している企業の原因を指摘することは、比較的簡単なことだが、それを打開するためにもっとも肝心なことは、企業の大小を問わず「理念を統一すること」であり、それを全社員に浸透させるために具体的に行動を起こし、社員と一体になって経営にあたる心の温かさが何よりも大切だということを森社長から学ばせて頂いた。


西部電機株式会社の沿革
資本金 26億5,840万円
設 立 昭和14年2月(創業昭和2年)
従業員 670名
東邦電力(現九州電力)の修理工場であった東邦電機工作所九州工場を前身とし、これを引き継ぎ昭和2年西部電気工業所を創業。

昭和14年 資本金18万円の西部電機工業株式会社に改組。

昭和20年 株式会社安川電機製作所が全株式を取得。

昭和24年 集中排除法により全株式を公開。
昭和61年7月に現社名に変更、同年12月に福岡証券取引所に上場、資本金10億3,300万円となる。
平成3年 大阪証券取引所二部上場
資本金26億5,840万円となる。

中央会計事務所
税理士 細野知久
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