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JDL Avenue vol.19 2000年3月掲載
経理実践トレーニング
経営計画編 vol.9

無借金経営への道程 9



いよいよ二極分化が明確な時代に

 昭和50年代後半から「これからは時代の潮流に乗った少数の儲かる企業と時代に取り残される大多数の企業とにはっきり二極分化する」と言ってきたが、それから20年間に事態は徐々に進行し、昨年あたりから漸くそれが顕在化してきたようだ。
 中小企業基本法の改正に見られるように、自らが積極的に変化をし、又は新たな事業分野に進出・チャレンジをする企業は支援するが、従来型を決め込む企業は支援しないとの方針が明確にされた。
 中小企業経営革新支援法などの産業政策関連諸法規の改正で今後ますます二極分化の傾向が激しくなることが予想される。
 東京都大田区には、30年前と変わらない企業もあるが、その一方世界に誇る独自技術を持った中小企業も多く、日本の製造業が駄目になると世界中の工業生産に支障をきたすとまで言われている。


計画経営30年の重み

 多くの中小企業が必要と分かっていても出来ない、或いは続けられないのが計画経営である。
 当シリーズでも繰り返し申し上げているが、計画を立てずに経営するのは羅針盤を持たずに航海に出るようなものである。
 今回紹介する東京都大田区の製造業、株式会社大橋製作所が経営計画書を初めて作成したのは実に1971年というから30年にわたってしっかりとした計画経営が実施されていることになる。
 同社では例年、第三四半期までの実績をふまえ年頭方針発表会を行っている。この発表会では金属加工のメタル事業部、液晶・半導体実装装置の機械事業部、そしてMA(メカトロ・アーケードゲーム機)の各事業部がそれぞれの状態を分析した結果得られた部門別重点課題を報告し、社長が大きな方向付けをし、年頭方針として発表する。その後1〜2月に現場からボトムアップで課題を抽出し、3月には泊まり込みでアクションプランを作成する。
 こうした一連の流れの中で検討された課題が来期の計画の基礎となって新年度の経営計画が策定される。
 予算と実績の管理は毎月の部長・役員会議で行って、その分析結果を現場へフィードバックしている。しかし液晶・半導体関連部門では特に製品のライフサイクルが短くなっている現在、今売れている商品だけに気を奪われていては次世代の商品開発が遅れてしまう。それを補うために予・実会議だけでは把握できない商品開発の方向性をつかむ営業会議が持たれる。週一回早朝に行われる事業所別(本社工場・第二工場・埼玉工場)の営業会議は、あくまでも現場での情報が話題の中心となり、時には激しい議論が行われ、その中から時代のトレンド・お客様のニーズ・お客様の会話に込められたメッセージを読みとり、新たな製品開発につなげてゆく。


図ー1(計画経営の基本)

技術系ネットワーク経営

 同社の物づくりは、大手企業がリストラの影響で市場の変化に対応できる人材など内部の経営資源が足りなくなり、同社のような企画・開発・生産まで総合力のある外部の力を必要としている状況の中で、お互いが自分の持っているものを充分に出し合ってこそ良いものが作れると言う認識の下に、お客様の頭の中にあるイメージの段階から関わり製品化してゆく。
 会社対会社というより、同社の技術者とお客様の技術者という仕事に携わる当事者同士のコラボレーションと言った方がよい状態の中で、同社のラボルームでの会話や展示会での発想から発展して製品作りが進められるので、客先である大企業の技術者が社内では発揮しにくい能力を遺憾なく発揮し、期せずして関係者全員の自己実現の場と化してくる。
 こうした関係の中だからこそ技術者同士のオープンマインドが独創的な製品作りに役立ってくる。
 大橋社長によれば、このようなネットワーク経営で力を発揮するのは、お客様の発する見えないメッセージを的確に捉え行動する「五感行動型」と、製品を作り上げるのに必要なあらゆる専門家の能力を充分に引き出すことが出来る「コーディネイト型」の人間だという。両者ががコンビを組むことでネットワークが柔軟性と広がりを持ち、自社で出来ることと出来ないことを峻別しそれをカバーしてくれるパートナーを探すことも自然に出来、変化が激しい電子機器業界においても常に新しい技術を習得し、新しい提案をし続けられお互いの企業がますます発展できる。


日経新聞優秀賞を受賞

 こうした物づくりの姿勢が生んだ同社のオリジナル商品が社会の客観的な評価を得、その途端に銀行の融資姿勢に変化が生じたり、商品開発能力に対する信頼度が増し引き合いが増え受注が増加したという。
 1999年「日経優秀製品・サービス賞」の機械・電子部品・家電部門でカシオ計算機のGPS内蔵腕時計、日本ビクターのD−VHSデジタルレコーダー、松下電器産業のコードレス掃除機「吸い取リック」等と並んで、卓上型液晶表示板駆動用IC張り付け装置「COGシリーズ」で見事に優秀賞を受賞した。
 この製品は小さな液晶板に駆動用の小さなICを張り付ける装置だが、技術の変化が激しい携帯電話の製造部門などでは全自動装置の大型設備投資はリスクが大きいことから、変化に柔軟に対応できる一組が3台の半自動にしてある。小型軽量で基礎工事が不要・値段が安いと評判になり国内の携帯電話メーカーばかりでなくアジア各地の工場から引き合いが急増しているという。
 今回あえてセミオートの機械を作ったことで、ユーザーの投資リスクを大幅に軽減することができ、同社にとっては全自動機械を作る大手企業との競合を回避した特殊分野を創造できたことが大きな成果だったといえる。
 この他にも、大手企業と共同で、住民票を発行する際に必要な朱印スタンパーの開発を行い製品化するなど着実に毎年2機種程度新製品の開発を実現している。
 前述の動きの他にも、永年計画経営を実践していることもあり中小企業経営革新支援法の認定を受け低利融資や補助金の活用ができ、東京都が企画している私募債の発行について金融機関から打診があるなど受賞がもたらした影響は大きい。


人が育つ環境(共に育つ)

 前記のような製品開発は全てがベテラン社員によって為されているのではなく入社間もない新卒・中途採用の社員も多く活躍している。
 例えば、理科系新卒者を採用すると彼らは新しい技術の知識を持っているし、コンピュータを当然のように使いこなす能力を持っている。
 文科系の人でも、海外へ単身で出向くなど実務に当たらせれば必然的に自分で判断せざるを得ない状況が出来て潜在的に持っている語学力を大いに発揮したり、専門的な知識・能力が備わり営業力・技術力が同時に付いてくる。
 お客様からの要求レベルが高くなると、それを実現するために必然的に各自の能力を最大限発揮しなければならなくなり力が付いてくる。まさに「仕事が人を育てる」状態が出現する。
 それには、経営理念の根本に人間形成を据え、経営者が「可能性を見出し新しい仕事に挑戦させる」姿勢を持ち「企業は自己実現の場」と考えその環境を作り出してゆくことが欠かせない。また技術系企業の経営者と言えども専門外の社会科学的素養とか歴史・文化・芸術など広い視野と見識が要求されるので、ご自身も日々新たなことを学んでいると大橋社長は語ってくれた。



会社の概要

商 号 株式会社大橋製作所
代表者 代表取締役 大橋正義
資本金 9,600万円
設 立 昭和34年8月5日
従業員 53名
本 社 東京都大田区大森南3-1-10
電話 03-3744-5351
FAX 03-3744-5749



中央会計事務所
税理士 細野知久
  〒179 東京都練馬区早宮2-17-37
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