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JDL Avenue vol.20 2000年5月掲載
経理実践トレーニング
経営計画編 vol.10

無借金経営への道程 10



優秀な企業の特性

 優良企業に共通していることは
・経営理念が確立している
・目標が明確である
・経営資源(人、もの、金、情報)にバランス良く投資している
の3点である。
 優良企業の仲間入りをする第一歩は、現在の経営環境を正確に把握することにある。
 私が経営計画策定の支援をさせていただくときにお勧めしている方法をご紹介すると、まず自分が宇宙船に乗って地球を見ているようにイメージし、徐々にズームアップして、アジア→日本→東京→練馬などという具合に我が社に到達する。そうすることにより自分の立場に囚われず、世の中の出来事を客観的にとらえる訓練をする。このイメージ訓練は経営計画立案だけでなく広く応用が効くので是非身につけて欲しい。  そうして捉えた客観情勢の中で、我が社の事業がどんな位置づけになるかを繰り返し検討し、具体的目標と照らし合わせチェックリストに記入する。
図−1経営指針作成の手引き(東京中小企業家同友会・経営対策委員会編)より


己を知るには

 中小企業基本法で中小企業の定義を変更したが、私の独断的な解釈では、「中小企業」であるか否かは、資本金の大小や社員数の多少で決まるのではなく、経営組織が確立されているか否かによる。たとえ資本金が3億円を超えても社長をはじめ経営に携わる誰が欠けてもすぐに社業に影響が出るような会社は「中小企業」だと定義したい。
 こうしてみると、危なっかしさと人間臭さがいっぱいの「中小企業」が非常にいとおしく思える。
 現代社会の中心的な位置にある大企業や官僚機構の中で「御身大切」を通し、ペーパーテストに合格していれば出世できたシステムが、現在の「恥を知らない」多くの事件や閉塞感に満ちた社会情勢を生み出している。
 そんなバブル崩壊後の倒産激増状況の中でも、中小企業経営者は「代表者の個人保証」という形式で、自分の全財産・生命を担保に入れて必死の思いで資金繰りをしてきた。
 しかるに倒産した上場企業の経営者で自分の全財産を投げうった例は聞いたことがない。もし読者の中でご存じの方が居たら是非おしえていただきたい。
 日本が戦後の復興から経済成長を遂げてきたなかで、損なわれてきたのが「恥を知る」心と「耳の痛いことを言う人を大切にする」心だ。その意味では多くの中小企業経営者も同様の誤りを犯している。
 人間味のあふれる中小企業家をこよなく愛する会計人の一人としてあえて苦言を呈すると、会社に全財産と命を賭しているにも関わらず「耳の痛い話を受け入れない」度量の狭さが多くの倒産を招いたのといえる。
 ご意見番を持たずにイエスマンばかりを身の回りに置けば、必ず「裸の王様」になる。
 「自分の頭の後ろは見ることができない」という。見えないところを見るには他人の力を借りるのが一番だ。私は「貴方が指摘されて腹が立つところが貴方の欠点だ」と教わっている。
 会計人である貴方なら、企業の経営者にとって耳の痛いことも言える「ご意見番」や「幕賓」となるべく日々研鑽をしていることだろう。
 また経営者にはそうした人物を「ご意見番」や「幕賓」として迎え入れる度量が要求されている。


経営理念の確立と経営計画の立て方

 会社は儲かっているのに虚しさを感じている経営者の多くは経営理念の大切さに気付いていない。時折、賭け事に夢中になる経営者に「毎日、事業経営という博打を打っているのに、まだやるの」と言うことがある。そんな人は大抵計画性が無く、事業経営が博打そのもので自分の仕事が天職になっていない。「この道より他に行く道はない」と思えるまで「何故この仕事をしているのか」を問い続けることで経営理念が確立できる。  しかし、そのようにして理念を確立するのは非常に難しい。そこで、目に見える具体的目標、例えば、「年収3千万円」等から始まり
・ベンツに乗る
・本社社屋を建設する
・別荘を持つ
等のギラギラとした欲望を掲げるところから入ってもらう。
 すると多くは自分に何をするかという内容になる。本当は、他人(お客様や社員)に何をしてあげられるかとなり、その結果としての「年収3千万円」でなければならない。
 しかし、最初からそれを求めると綺麗事になってしまう。だから目標の段階でもっともっと自分が本当にやりたいことを突き詰めていかないと、「儲かっているのに虚しい」ところまでも到達しない。
 そこを通過した人でないと確固とした本物の経営理念は生まれない。
 それを引き出すために、
・5年後にはこの会社がどうなって欲しいのですか?
・そのためには来年何をしなければならないのですか?
・貴社にとって、今一番重要な課題は何ですか?
・そのためにお金を使わないで良いのですか?
・「目標利益4千万円」。では、そのお金で何をしたいのですか?
・税金を払った残りの2千万円で、どんな投資をするのですか?
・それとも、借入金の返済が主な目的ですか?
などに明確な答えが出るまで様々な質問を投げかける。
 今年度の利益目標を立てるとき、貴方ならどこから始めるか。
 前年の売上高が10億円だから、今年は1割り増しで11億円等という計画は、計画とは言えない。
 図−2にあるような赤字を抱えた一般的な事例で説明しよう。
 このケースでは、当然赤字の解消と借入金の返済に重点を置くべきだ。
そのときの考え方は
@欠損金の3千万円を3年でゼロにする。(無理のない計画で)
A3年間は目標利益2千万円
Bその間は税金は不要だから目標を達成したら半分は決算賞与にする。(意欲を引き出す)
C残りの半分で借入金の返済をする。その場合に約定返済額が1千万円を上回るようなら経営計画書を提示して積極的に条件変更を求める。
D過去の設備投資が過大だったので借入金依存体質になっている。これを何年で解消するかを決定する。 5億円を返済するのに毎年1千万円では50年かかってしまう。それでは銀行が納得しないだろう。中・長期計画を見直し、当初の約束の15年とか20年で返済する目標を立てる。

期待される会計人像

 いま日本の産業社会にグローバルスタンダードと市場主義が急速に取り入れられている。その一つである新会計基準は単に上場企業の問題ではなく、中小企業経営に対する評価基準に多大な影響をもたらし、企業と会計事務所の関係も大きく変わるだろう。会計人は税務と記帳代行主体の従来型の関与から、経営に積極的に関わって経営体質改善のために共に苦しみながら激変する時代を乗り切ってゆくパートナー或いは「幕賓」としての働きを求められている。


中央会計事務所
税理士 細野知久
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