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経理実践トレーニング 経営計画編 vol.13 無借金経営への道程 13 金融政策と中小企業経営 金融ビッグバン、その仕上げ段階に入った金融監督庁の金融検査マニュアルに基づく信用金庫・ 信用組合への締め付けで、中小企業に対する金融機関の融資姿勢はますます厳しくなっている。 その一方で大手ゼネコンや流通グループ企業が金融機関に対して「借金棒引き」を要請し受け入れ られている状況は、日本の中世の「徳政令」にたとえられている。*注 昨年の中小企業基本法の改正で、国の中小企業政策は、「中小企業者の経営の革新及び創業の促進 並びに創造的な事業活動の促進を図る」方向に変わった。 しかし、金融機関は保証人や担保物件があるだけでは不充分で、継続的に利益が出て、返済原資が 確保されている企業にしか貸し出しはしない。今や保証人や担保物件さえあれば貸すのは、取り立て の厳しい、評判の悪い金融業者だけである。 お金とつきあう哲学を持とう さて、今回は経営資源(人、物、金、情報)の中でもとりわけ無視できない「金(かね)」につい て論じることになるが、その大前提として「金銭哲学」の重要性を強調したい。 あなたはお金に対してどんな感覚を持っているだろうか。お金を汚いものだという人は、 「きれいな扱い方」ができていないといえる。 企業経営に限らず「人も金もそれを活かしてくれる人のところに集まる」と言われるが本当 だろうか。 長引く平成不況の中でも着実に利益を出している企業群がある。これらの企業の特徴を分析する ことでその真偽が確かめられる。 禅宗などの日本の宗教書を読むと、ほとんどの書物には「お金の害」についての記述がある。 いわく、 「貧乏人の前を牛車で通るな」 「古来、覚者は富を持たない」 「富を得ると、それを失うまいとして、さまざまな災いが生じる」 等々。 しかし、お金に善悪はない。 これらの箴言は、現代に置き換えた場合 「金を持ったくらいで横柄になるな」 「本当に偉い人は金では動かない」 「中途半端に財産を残すと相続争いの原因になる」等という表現になるのだろう。 我々凡人は、お金の持つ良い側面に影響されるよりも、悪い側面に害されやすい。それを 戒めているのがこれらの箴言である。 よく考えたら、「親しい者とは金の貸し借りはするな」、「借金の保証人にはなるな」、あるいは 「借りたお金は必ず返す」という当たり前のことや、さらには「金は決済の道具に過ぎない、決して 目的にしてはいけない」等と、どれを取っても我々庶民が祖父母や親の世代から言い伝えられ、言い 古されてきたことばかりではないか。 国政に携わる代議士さえもが、金を扱う目的を忘れ、与えられた使命に違背する金の使い方をする 様な国にしてしまった我々とその上の世代の責任は重大なものがある。 斯様に金は持った人、使う人によって良くも悪くもなる性質を持っている。言ってみれば、金は人 を計る試金石にもなる、ある意味では恐ろしいものだと認識して欲しい。 士は己を知る者のために死す 企業経営は人間社会における経済活動を中心に回っているが、それは企業の持つ一つの側面にしか 過ぎない。そこに働く人々が作り出す社風や商品・店構え・町並みなどの文化的側面も忘れてはなら ない。多くの人間は、そこで共に夢を語り、自己実現を図れることを願って仕事をしているのではな いだろうか。 業績の良い企業にはそれがある。 企業経営はそこに参加する人々の「人間性を鍛える道場であり、同時に感動を共有する場である」 というのは、経営者にとって「この人のためなら一命をなげうってでも、与えられた仕事を成し遂げ たい」と言ってくれる社員を持つことである。 そういう社員がいないなら、社長!あなたは嫌われているのですよ! 尊敬される人間になるのは、難しいことだが、少なくとも、媚びることなくして、嫌われない経営者 になりたいものである。 利益は社会貢献のバロメーター しかし、いくら文化的側面が大事だとは言っても、企業経営をして「利益が出せないのは罪悪」 である。 「利益は社会貢献のバロメーター」というのは、その企業の商品や提供するサービスが多くの人に 支持されることで、企業がその存在価値が認められて、その結果として利益が上がることをいう。 「利益」は目的にしてはいけないが、目標として「利益の出る経営」を目指せというのはそういうこ とである。 「金」は企業の善し悪しを評価するための単一の基準としての「貨幣価値」に過ぎない。人を育て ても、財務諸表上に表現されないことで分かって欲しい。「目に見えないものを大切にする経営」と いう言葉にはこの様なことも含まれている。 金は天下の回りもの 金は別名「お足」と言われるように、目の前を足早に通り過ぎて行くものだと認識すべきだろう。 「溜まった水は腐る」といわれるが、それと同様に、お金は貯め込むと活かせない。お金は上手に旅 をさせると、その役割を充分に果たしてくれる。 キャッシュフロー(以下CF)の感覚でいうと、「営業活動CF」で稼いだお金をため込んではい けない。それをうまく次の「投資活動CF」に投入するのと「財務活動CF」における借入金の返済 に充てるのとをバランス良く振り分けている。そんな状態を作るのが経営者の責務である。つまり、 お金の活きた使い方が出来る企業が業績を上げられる。 社員持株会と株主総会 商法の大改正が法制審議会で論議されているが、我が国の中小企業経営では、株主総会を開催する といった商法の基本的事項すら守られていなかった。それは多くの中小企業では社長またはその一族 だけが出資者・株主であるいわゆる同族企業だったからである。 そうした中で、優良な中小企業の中に「社員持株会」を組織している企業が散見される。 社員持株会は、元はといえばバブル経済期に同族企業の相続対策の一手法としてもてはやされたも のだが、良心的な経営をしていた経営者は、その当時から一族の利益のみを考えず、社員の協力を得 るためにも、社員にもメリットをもたらす形態として「社員持株会」を採用し、利益が出れば配当を 出していた。その結果として、創業者一族以外にも、株主が増え、法令に則ってキチンとした株主総 会を開催し、経営方針なども株主総会で明示する開かれた経営をするようになった。 同族関係者以外のものを株主にするのはリスクもあり、一大決心をしなければ出来ることではない が、そうすることで結果として、経営者のわがままが効かなくなり経営は正常化してきた。 この例のように、我が国の中小企業経営においても、その経営姿勢の中に「資本と経営の分離」が 必要とされる時代が、近づいている。 注 「借金棒引き」の経済学 北村龍行著 集英社新書 |
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