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経理実践トレーニング 経営計画編 vol.15 無借金経営への道程 15 ますます強まる融資先の選別 このシリーズの目標は「無借金経営」である。しかし無借金経営が目標だからといって借金をする なというのではない、返せる当ての無い借金をするなというのである。企業経営にとって金融機関に よる融資は、絶対に必要な間接金融のシステムである。この先、中小企業金融を考える場合、いくら 頑張っても直接金融(出資)だけで企業の事業資金全てを賄うのは無理がある。資金の性質・利用期 間等に応じて政府系金融機関を中心に利用すべき時もあれば、状況によっては信金・信組を利用し、 ボリュームが大きくなれば都銀でなければならないこともある。それぞれの持ち味を活かした使い方 をしなければならない。「必要なときに・必要なものを・必要なだけ」これは金融にも当てはめられ る。 そのために、経営者はもっと金融機関の仕組みと実体を知らなければならない。 今の時代、金融機関にとってだけ正常な状態に戻りつつある。それは、「貸し渋り」や「貸し剥が し」によって自己資本比率を改善した金融機関が、更に、収益力のない企業(つまり利益の殆ど出て いない企業、又は赤字企業)や計画性のない企業には融資をしないという経営方針を打ち出さざるを 得ず、融資先の選別を厳しくしていることに現れている。これにより、中小企業の側はより一層、資 金繰りが厳しくなっている。 それに拍車をかけているのが、2002年4月のペイオフを睨んだ、金融庁の早期是正措置の発動も辞さ ないという強い姿勢である。具体的には、この年頭から更に強まった、信金・信組に対する金融庁の 資本増強計画の提示を求める動きが信金・信組に合併を模索させ、それでもうまくいかない場合には 、金融庁は破たん処理をしていることがそれである。 その結果、事の是非はともかくとして、中小企業金融といえども「企業単体」で見て融資が可能か どうかを貸し手側が判断せざるを得なくなってゆく傾向がますます強まっている。 ごく普通の庶民感覚で考えても、お金を出す側は次のように考えるだろうことは否定できないと思 う。 まず銀行などのように融資する場合は @有利な金利で貸せるか A元本を安全に回収できるか B万一のリスクに対して担保する手段はあるか の3点は最低限のチェックポイントであろう。 またベンチャーキャピタルのように出資する場合には @事業の成功する可能性はどの位か Aその根拠はハッキリと示されているか B取るリスクと期待できるリターンは見合っているか 等がチェック項目に入るだろう。 したがって、資金の提供を受ける側はそれらのことにハッキリとした説明を出来るのが、これまた 常識であろう。しかし、現状の中小企業金融はそうした説明を貸し手・借り手お互いが要求したりそ れに応えていることは稀であろう。 このようなやりとりが日常化しなければ中小企業金融は正常化しないだろう。 しかし金融庁の厳しい検査の一方では、国の新しい産業政策に基づく融資・助成金制度がどんどん 拡充されているのも事実である。こうした各種融資・助成制度を活用しようとすれば、必ず事業の革 新性・新規性などを説明するための「事業計画書」の提出を求められる。 国の産業政策全体において、旧来型の無計画な経営を続けている中小零細企業はもはや保護の対象 ではなく、支援の対象からも外されていることをしっかりと認識すべきである。 中小企業も計画経営を 開業以来20年近くにわたり多くの中小企業に計画経営を薦めている私にしてみれば、いい加減我慢 しきれずに「もう勝手にしたら!」と言いたくなるのをじっと堪えながら、それでも計画経営を薦め ている数年間である。 多くの中小企業経営者は、とりわけ零細規模の企業はスタートが間違っている。出資者・役員・作 業員全てを兼務しているからやむを得ないとは思うが、日常業務それも作業が経営そのものだと勘違 いをしてしまう。そして経営にとって一番必要な「経営環境・企業理念・人生観」等を深く掘り下げ ることなく日常に埋没している。 経営の何たるかを考えているという意味で、多少ましなのが大手企業からの脱サラ組だが、今度は 彼らの作る計画となると計画とは名ばかりの「理念・理想像」等とはほど遠い「法螺と見込み」でで っち上げた数字の根拠となる資料が無い詐欺まがいのものが多い。これでは、金融機関もまともに融 資を検討してくれるわけがない。 そのような状態から脱却するには、自分の人生や事業について理想像を描くことが重要である。 あなたは「何のために」この仕事をしているのか。例えば、「ベンツに乗りたい」「儲けて豪華な 応接間のある家に住みたい」「銀座の一流クラブで遊びたい」など。しかし、それが間違っていれば 社員も世間も支持してくれないからすぐに分かる。 最初は、自己中心的でも何でもよい、自分が「こうしたい」とか「こうなりたい」という欲求がハ ッキリしていないと、ちょっとお金が自由になるともうそれで満足してしまう例があまりにも多い。 そこで満足せずに痛い目にあったら「何が違うんだ?」と真剣に悩んで欲しい。 でも、時代の変化があまりにも早く、遠回りするにはあまりにも時間がない。 それを解決するには良き指導者を持つことだ。自己流でも上手くいくこともある。しかしそれは一 時的なもので、やはり、何代にもわたって続けるべき企業はそれではいけない。あなたが創業者で、 創業時にはそこまで考えていなかったというなら、今がその時だ。 良き師を持ち、充分に廟算を重ね作り上げたその「理想像」と現状のギャップを正確に把握する。 そして更にその差を埋めるための方策を熟慮する。 さて、こうして自社の行くべきところが定まったら、そのことを「社員全員」に共通認識させなけ ればならない。ところが、この通称「落とし込み」というやつがまた一筋縄ではいかないのだ。社長 が毎日耳にタコができるくらいに同じ事を繰り返し言っても、聞く側の社員がその気になっていなけ ればいっこうに効果が出ない。こんな時こそ社長の私淑するような外部の幕賓が必要になる。現代風 に言えば、社外取締役である。外部の客観的な立場から我が社がどういう状況か、何をしなければな らないかを説いてもらう。これが驚くほど効果的である。 これはトップダウン方式の場合で、理想的には、全社員の「自発性・自律性」に基づいた「自分の 人生をこう生きたい」という考え方が合致して自然発生的に出来上がった「社是・社風」が出来上が るのが望ましいが、今は時間がない。その前に会社が無くなってしまっては元も子もないから、余裕 のない方はこの方法でやって欲しい。体力も資力もあるが、何故か沈滞しているような「老舗」には ボトムアップが出来るかも知れない。 良い経営環境を自ら作る努力を 冒頭に記したような、金融機関の経営姿勢が自社の保身が最優先になっている現状では、中小企業 金融は機能不全を起こしてしまう。 中小企業にとっても、中小企業金融を担う地域金融機関にとっても望ましい経営環境は、金融機関 が融資にあたり企業単体での評価を徹底し、 企業の「収益力」と「経営計画」を重視し、「代表者の 個人保証を徴求せず」、「個人資産の担保を要求する場合に自宅はその対象から外す」、等の条件が 整うことである。そうした社会環境は、議員立法が当たり前になっている今日、我々経営者が政治家 に働きかけてそのために必要な法律を作らせる事によって出来てゆく。その位の意気込みがなければ 、中小企業の明日は永久に開けない。こうした社会的な共通認識が高まるまで、私はこれらのことを 言い続けるのでご支援願いたい。 そうした中で、昨年秋、立教大学経済学部助教授の山口義行氏がNPO(特定非営利活動法人)2 1世紀政策構想フォーラムから 『「怒り」を「知恵」にかえて、今こそ『金融アセスメント法』を制定しよう』 という小冊子を出版された。 民間から21世紀の中小企業金融はこうあるべきだという提言がなされ、愛知県をはじめとして、 福岡・北海道・東京等全国の中小企業家同友会が動きだし、署名運動をはじめとする活発な動きがで てきたのは評価に値する。読者諸氏も、この話を一人でも多くのお仲間の経営者にお伝えいただき、 自らの経営環境を自らの手で改善して頂きたい。 ※金融アセスメント法の詳細は山口義行氏のホームページ http://www.media-kiss.com/yamaguchi/ を参照されたい。 |
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