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JDL Avenue vol.27 2001年5月掲載
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経営計画編 vol.16

無借金経営への道程 16



日本経営品質賞

 最近筆者が注目している「日本経営品質賞」(JQA:Japan Quality Award)という賞がある。
 この賞は、1980年代の米国不況を乗り切り産業の復調に役立ったと言われているマルコム・ボルドリッジ賞(米国国家経営品質賞)に習い、日本でも「顧客・市場の求める価値を創り、長期にわたって競争力を維持できる体制づくり」を支援するために1995年12月に創設された賞である。
 (財)社会経済生産性本部により96年にスタートして、第1回目の受賞は「NEC半導体事業グループ」、翌97年度はアサヒビール、千葉夷隅ゴルフクラブが受賞した。
 これらの企業に並んで98年度に堂々の受賞をした株式会社吉田オリジナルという中小企業があるが、同社の吉田社長のお話を聞く機会を得たのでその一端をご紹介しよう。
 同社は、日本経営品質賞が求めるところの
@社会的責任や環境対策
A社員の能力・意欲
B製品やサービスのクオリティ
C生産性、効率性、即応性
Dサプライヤー(協力会社)の能力
E顧客の満足度、継続的利用意欲度
F市場占有度、新規開発度
G財務的成果
どの項目をとってもかなりの好評価を得られる企業であることは間違いない。以下、その実態をご紹介する。

バッグのアフターケアをする会社

 この会社は「ハンドバッグ袋物革製品の企画、製造、卸、販売、アフターケア」を営業内容としているが「アフターケア」をそこに入れていることからも経営姿勢に独自性が感じられる。そのために「修理スタッフ」がいて、古くなったバッグの手ひもの交換や染め直し裏地交換等の他にも、母親から娘に譲りたいからデザインをかえて欲しいという要望にも応えているという。こうした対応は顧客に満足を与えるばかりでなく、古いバッグを丁寧に解体して、弱くなったところ、ほつれたところなどを補強し、元のミシン穴に合わせて一針一針縫って仕上げる作業を通じてスタッフの責任感も、技術力も高まってますます好循環が生まれているようだ。
 創業者である吉田茂社長はもともと名古屋の皮革商社に勤めていた人で、そこから独立開業してご自身で皮革卸の事業を始められた。しかし皮製品の原材料なのでどこの会社の物も大差なくなかなか業績を上げることが出来なかったという。そこで一旦は他の事業を考えて喫茶店の経営をしたが専門外のことで上手く行かず半年で閉店を余儀なくされた。
 その失敗の後、やはり自分の専門分野の事業が一番であると悟り、自分を見つめ直すために欧州に渡ったそうだ。その時スペインのイビザ島で手作りの素晴らしいバッグと出会い「これならいける」と確信し、バッグ製造の勉強を重ね、自社オリジナルのバッグを製造できるところまでこぎ着けたという。同社のブランド名「IBIZA」はその時の思いを込めて名付けられた。

素材にこだわり一貫生産

 吉田社長自身による原料の買い付けが象徴するように素材にこだわり、「素材そのものを活かしたもの作り」をモットーとしている。そのあたりを吉田社長はこう説明している。
 『バッグが手に触れたときの感触は、見た目では分かりません。しかし、肩にかける、腕に下げる、手で持つ、膝に置く、バッグを開け閉めする、それぞれのシーンでバッグの素材は頻繁に身体に触れます。肩や腕にかけた時、体になじむフィット感、ものを出し入れするときに手に触れる革の柔らかさ、そうした感触は目には見えなくても、どこかでバッグとの一体感を体と心で敏感に感じ取ることでしょう。イビザが、色やデザイン、機能性だけでなく、どこまでもその素材にこだわるのは、そうした目に見えないとても大切な理由があります。また、長年にわたり使っていただいた末の修理にしても、素材が良ければ仕上がりも良い場合が多いのです。』
 当初、製造したバッグは卸売業者を通して販売していたが、デパートなどではブランド品を扱うことが多くて同社の付け入る隙間がなかったが、結果的にはそのことが幸いした。
独自の工夫をして革の特長を生かしたバッグを製造しても「高いか・安いか」「儲かるか・儲からないか」という基準でしか判断されず「作る喜び」が得られなかった。そこで、青山にアトリエをオープンして、お客さまの声を聞きながらお客さまに喜んでもらえるバッグ作りをはじめて2年経った頃デパートでの実演販売を頼まれた。その時に買ってくれたお客さまが有り難くて、住所と名前を書いてもらい後日お礼状を出したりして、コミュニケーションが始まった。これが今日の94万人の顧客名簿の原点だという。

94万人の<個>客名簿

 顧客名簿を作成している企業はいくらでもあるが、一人一人のお客様がいつ、どこで何を買ったかを集計している会社はまず無いだろう。ところがそれをやっているのだ。そしてその名簿の内容は販売員さんにフィードバックされ、お客さまの動向を常に把握することに活用されている。
 吉田社長は、海外に仕入れに行く時は大きな鞄一杯に2万枚のハガキを持って、現地の記念切手を貼って投函するなどの努力を惜しまない。

賞観(しょうみ)期限

 生鮮食品には「賞味期限」があるが、IBIZAのバッグには「今だけ、ここだけ、貴女だけ」とのキャッチフレーズのもとに「賞観期限」が設定されている。
 ここにも同社の製品に対するこだわりが現れている。以下、同社の主張を紹介する。
 『イビザのバッグは、天然素材ならではの風合いが命。それだけに、私たちは食品と同じようにバッグも鮮度を大切にしたいと考えています。
 そして、お客さまと商品の出会いもいつも新鮮なものであってほしいと、願っています。(中略)
 賞観期限は、季節感やデザイン性など商品の特徴に合わせて設定し、商品にデザイナー、素材名、重量、賞観期限を記入したラベルを付けています。』


=(図−1) ラベルの見方 =

 賞観期限/2001年 3 ←@
  ・デザイン/ 吉田 茂  ←A
  ・素材/バッファロー  ←B
  ・重量/600g   ←C
 イタリア・イタルハイド社2/15まで ←D 
                  



@・・・賞観期限
A・・・デザイナー
B・・・素材名
C・・・重 量
D・・・備 考

←このラベルがついている商品が
 「賞観期限」の商品です!



抜群の業績には訳がある

「お客さま第一主義」を唱える企業は山ほどあるが、口で言うだけでなくこれだけ実践している企業は数少ない。
 昨年度は売上高44億円、経常利益率は実に19%というこの不況にも関わらず驚異的な利益を上げているが、これはいつも申し上げている「利益は社会貢献のバロメータ」を表すものだ。
 これも、過去にコツコツと地道な努力を積み重ね日々少しずつ改善してきた結果が習慣となりその効果が、今、現前しているに過ぎないのだ。
 業績を伸ばしている企業は、決して楽をしてそうなってはいない。様々な工夫をし、仕事に打ち込み、日々弛み無い努力を積み重ねている。業績が落ち込んでから「さてどうしよう」と考えているようでは、とてもこの激変の時代は生きて行けない。
 業績の良いときもコツコツと努力を惜しまず更に上を目指し、理想的な状況を夢に描いて精進している姿がお客さまを始め従業員・協力会社など経営に関わるすべての関係者に感動を与え、それが日本経営品質賞の受賞につながったのだろう。
 「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えることができる」という言葉のとおり、今、業績の悪い企業は、すぐには変わらないが、今することが将来を変えることを確信して、最善の努力をして欲しい。
「今、ここ、自分」と自らの心に言い聞かせて経営に励んで頂きたい。


概  要
社  名
 株式会社吉田オリジナル
営業内容 ハンドバッグ袋物革製品の企画、製造、卸、販売、アフターケア
本  社 東京都港区青山3丁目1番地36号 丸竹ビル
      〒107-0062 TEL03-3470-1447
創  業 1965年(昭和40年)5月
資 本 金 8,120万円
社  員:105名、準社員:188名、販売員:90名…計383名
(平成12年8月現在)
イビザのホームページ
http://www.ibiza.co.jp/


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税理士 細野知久
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