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JDL Avenue vol.29 2002年1月掲載分
経理実践トレーニング
経営計画編 vol.20

無借金経営への道程 20


痛みを伴う構造改革の実情
 今、全ての企業が戦後50年間続いて来た旧来型金融システムからの脱却を図ることを強制されている。
 その具体的な内容は、マクロの側面においては間接金融主体の経済システムから直接金融主体の経済システムへの移行であり、個別企業においては自己資本の充実であり借入金依存体質からの脱却である。
 今の経済情勢は、トランプゲームの途中でルールを変更して、変更後のルールでそのままゲームを続けるのが良いかどうかの論議をしている様なものである。
 金融の自由化というパンドラの箱を開けてしまってから、「戦後50年間当然のこととしてきた、緩やかなインフレを前提とした借金依存型・含み益依存経営を即座に止めなければ経営が成り立たなくなるが、さあ皆さんどうしますか?!」と迫っている状況といってよいだろう。
 土地投機へ過剰反応したことで金融政策の失敗を招き、際限のない地価下落を生み出し、土地本位主義(または担保主義)であった旧来の金融システムそのものの崩壊まで招来している。
 このままズルズルと旧体質の企業を温存することでは日本経済は決して再生できないだろう。それには、企業自身が変化するか、変身できない企業は退場するしか方法はないというのが「構造改革」の意味するところである。


企業の継続だけが善か?
 事ここに至っては、旧体制の中で培養されてきた旧体質の全ての企業が、一旦ゲームをご破算にして、新しいルールに基づくゲームを再開する方が賢明ではないだろうか。
 もっとハッキリ言えば、民事再生法の成立までの予想に反して、中小企業ではなく大企業が民事再生法を利用して企業を再生しているのだから、永いこと旧体制の中で育ってきた創業から20〜30年以上たった企業に多く見られる借金依存体質が染み込んだ中小企業は今の会社を倒産させて、従業員を中心とした新会社を設立させる方法は採れないか検討してみる価値はないのだろうか。
 その際に引き起こしてはいけないのが、個人保証という名の無限責任を負わされる中小企業経営者の自殺や夜逃げによる家庭の崩壊である。そのような不幸を未然に防止する為のセイフティーネットを早急に整備するよう当局に要求すると同時に我々の身近なところで不幸な事態が起きないように啓蒙活動をして頂きたい。
 もしあなたがその当事者なら、こう申し上げる。
 「会社の倒産は人生の終わりではない」「失敗を教訓として活かし、再起することが大切だ」と。

 どうしても会社を倒産させたくないという大多数の経営者のために、試しに図のような借金依存体質になっている企業がそこから脱却するシナリオを描いてみよう。


上記のうち
銀行からの借入金 7億円
土地建物の時価  3億円
自己資本     1億円
 この状態から、銀行借入金を土地建物の時価3億円まで減少させるだけでも、4億円を返済する必要がある。仮に4億円を5年間で返済するには、年間8千万円の税引き後利益が必要となり(減価償却費等のキャッシュフローを考慮しない場合)、実効税率40%として約1.3億円強の税引前利益が必要となる。
 この企業にそれだけの収益力が存在するのなら可能性はあるが、今の経済情勢の下で古い企業体質から劇的に変身しない限り不可能な場合が多い。
 冷静に現状分析をして、続けるべきか否かを熟慮断行して頂きたい。

中小企業で直接金融を実践しよう
 金融庁が金融検査マニュアルに従って信用金庫等の取引先中小企業を査定するに当たって、代表者個人に対する信用力と切り離して企業の財務諸表単独で判定するよう求めているのは、その貸付先企業の実体を勘案したら明らかに間違いである。金融検査マニュアルはあくまでも大企業向けの内容であり、そのまま中小企業の査定に用いるのは無理がある。
 信用金庫が中小企業への貸し出しに際して、会社法(商法・有限会社法等)で予定している会社の実体を実質的に満たしていないような企業は個人事業者と見なして、個人と会社を一体として判定するのは、むしろ当然のことである。
 一方、会社としての実体を備えた中小企業には、金融機関はその貸し出しに際して、個人保証と言う名の無限責任制度を強要するのは止めるべきであるし、そのような企業こそは金融検査マニュアルの基準による判定が生きてくる。

 因みに、中小企業において会社としての実体を備えているか否かの判定要素を掲げると、
@代表者以外の有力株主が複数存在する。
A取締役会・株主総会を法令通り開催している。
B経営内容が公開されている。
C社員・株主への業績に基づく利益配分基準が明確にされている。
D経営理念に企業の社会性を掲げている。
等が考えられるが、新しい時代の信用管理システムの基準として、大いに論議してゆく必要がある。  このような基準を満たして、21世紀型中小企業のモデルとして、個人保証のいらない経営スタイルを確立する試みをしてみてはどうだろう。

 現在の日本の中小企業金融システムでは、中小企業が借り入れをする際に金融機関は当然の如く代表取締役の個人保証を要求している。
 これは前述のように、中小企業の多くは会社とは名ばかりでその実体は社長の個人事業である場合が多いから貸付をする側としては当然、与信は個人財産と法人の財産及び収益力の双方を考慮せざるを得ないという事情から生じていることである。
 であれば、会社としての実体を持った企業に対する貸付なら反対に、当然会社の収益力や将来性、そして会社の保有する財産の範囲で融資の可不可を判定できるようになるのではないだろうか。
 そのような会社の資本金の出資者としては、そこに働く社員が自ら出資して、自らが知恵を絞り汗を流して会社を支えるシステムになる様な人々が望ましい。自らの働く場を確保するために、家庭内に眠っている1400兆円の個人資産のほんのわずかな部分を直接金融の形で自分の会社に出資することで、なかなか進まない不良債権処理や政府の援助を待つことなく、速やかに新秩序と新体制に順応した21世紀型の新しい中小企業を出現させることが可能なのだ。
 このような会社なら必然的に経営手腕があり、人望も厚い人に経営の舵取りを委託する様になり、文字通り取締役は経営を委託されているに過ぎないので、従来のワンマン経営のような独断専行は許されなくなり、経営に失敗する確率も少なくなる。
これを 「日本的中小企業型資本主義」と名付けよう。


生き残るためには順応し、変身を!
 マンモスや恐竜のように環境に適応できない生物は絶滅する。同様に環境に適応できない企業は倒産する。
そして、環境に適応できない人間は社会から疎外される。そうならないために、我々に今要求されているのは環境の変化に柔軟に適応する能力を最大限に発揮することである。

中央会計事務所
税理士 細野知久
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