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経理実践トレーニング 事業承継編 vol.1 価値観の激変する時代 先の大戦が終わってから来年で60年にな る。経済や社会情勢の変化を捉える仮説の一 つに60年周期説があるが、我が国では古来の 干支(えと)を基にする捉え方がそれであ る。 人間の寿命・学習能力・成功体験にとらわ れる・製品のライフサイクル論・それらが原 因となって起こる企業の栄枯盛衰などを基に 考えると、干支をあながち迷信として退ける わけにもいかない。試しに60年前頃と現代を 比較してみると多くの共通性を見つけること が出来る。 図−1 出来事60年年表 60年周期で何が起こった ![]() ![]() 昭和19年の日本は「大本営発表」により戦 況の悲惨な事実を覆い隠して、ひたすら滅亡 の道を走り続けていた。その結果、翌昭和20 年に国民は焦土と化した町の中で、それまで の価値基準を否定され、現在のイラクさなが らに占領軍による統治の下に新しい価値観を 土台にする生活を強いられた。それにより終 戦までの生活が一変した話し(良くなった例 も悪くなった例も両方ある)はあなた自身が 経験していなくても、周囲の人々から多く見 聞しておられるだろう。 現行憲法が公布されたのは昭和21年でその 年に金融緊急措置で預金は封鎖され新円が発 行された。2・1ゼネストがGHQの命令で弾圧 されたのは翌22年でこの年には教育基本法・ 労働基準法・独占禁止法・改正刑法・改正民 法などが相次いで公布され、児童福祉法が施 行された。翌23年には昭和電工疑獄で多くの 政官界要人が逮捕された。地下鉄サリン事件 が起こるまでは戦後最大の毒殺事件といわれ た帝銀事件が起きたのもこの年だ。翌24年に は当時の国鉄総裁が謎の死を遂げた下山事件 が発生している。同年1ドル360円の単一為替 レートが設定された。シャウプ勧告に基づく 直接税中心の税制もこの年にスタートした。 まさに価値観・価値基準の激変とそれに伴 う世代間の断絶が次々と起こった時代だっ た。 これからの数年間は、終戦直後に起きた事 柄と酷似する事態が次々と発生するかもしれ ないと想定しながら企業経営をする必要があ ると感じる。 韓非子は、人口が増えるだけでも、政(ま つりごと)の仕方は変わらなければならいの だから、尭・舜・兎といった古(いにしえ) の真似をするのは馬鹿げているとし、「夫れ 古今は俗を異にし、新故は備えを異にす」と 言う。「新しい葡萄酒は新しい革袋に入れ よ」というキリストの言葉もある。 新しい時代の舵取りは新しい価値観で生き る次世代の若い人々にバトンタッチをするの が、創業者に課せられた任務である。それが 出来なければ衰老の辛酸を味わうことにな る。 図−2 中小企業経営に関する価値観の変化の様子 ![]() 企業経営とは木を植えること 現在も様々な側面で価値基準の激変が見ら れるが、そのような状況の時に古くからの事 業を継続するのは至難の業であり、引き継ぐ よりも新規に起業した方がよいと思われる要 素が沢山挙げられる。 それでも敢えて事業を承継するのであれ ば、どの様に考えて実行すべきかをしっかり と検討すべきである。 しかし多くの中小企業では、そうした慎重 な姿勢を欠く安易な事業承継が行われてい る。 例えば、単純に創業者の直系血族だからと いう理由で後継者を決めていないだろうか。 また、創業者が高齢になって体力も気力も衰 えてから初めて気が付いたように後継者問題 を論議していないだろうか。 創業30年〜40年経っている多くの企業 が苦境に立たされており、「何故もっと早く から後継者を育てておかなかったのか」とい う無念さを禁じ得ない。 元来人間には寿命があり、いつまでも若く いられるはずはなく誰でも必ず死ぬのだが、 そこは凡人の情けなさで、自分だけは別だと 考えてしまうのだろうか。(筆者もご多分に 漏れずその一人であることを白状してお く。)多くの中小企業経営者が創業期から発 展期にいる時に後継者育成の重要性に気付く 例は非常に少ないように見受ける。 今は懐かしい「会社の寿命30年説」を引 き合いに出すまでもなく、創業時から30年後 を考えながら経営できるように心がけて欲し い。 今40代のあなたは、創業間もないかもしれ ないが、今から後継者の育成を始める必要が ある。50代になってしまっているあなたは少 し遅いがそれでも「思い立ったが吉日」とす ぐに事業承継対策を始めて欲しい。 企業経営の醍醐味は、決して金儲けではな く、仕事を通して(自分も含め)人を育てる 機会を持たせてもらえることだと早く気が付 くことが、事業の成功に結びつく秘訣だと断 言する。 混迷の時代を背負って立つ次の世代に力を 与えることは、為政者が国家百年の計を練る に等しい、庶民の出来る植林作業だと考えて いただきたい。 幕賓を持つ重要性 前の時代なら「借金も財産の内」などと奨 励されてきたことが否定され、男子一生の夢 として築いてきた本社社屋の価値はバブルと 消え、業績の良い会社ほど自社株の評価が高 く相続税に苦しむ。こんな現在の中小企業経 営者の苦しみを見ていて、自分が育ってきた 時代の価値観を脱ぎ捨てることが如何に難し いかを痛感している。 経営者は孤独だと言われるが、多くの場合 それは幕賓たる外部スタッフをその時の気分 で切り捨ててきた結果、良き相談相手を無く し、孤独ではなく孤立しているのだ。 過去に正しいことを言ったが為に切り捨て られた経験を持つ弁護士・公認会計士・税理 士・コンサルタントなどの専門家は多くいる が、それでも尚、あなたのお手伝いをさせて 頂く覚悟で仕事を引き受けていることを心に 留めていただければ、専門家としては仕事冥 利に尽きる。 次回からは、外部スタッフ(幕賓)として の専門家を使いながら出来る事業承継対策の 考え方と、具体策を提示するのでご期待いた だきたい。 ●参考図書 20世紀年表 小学館 2001年発行 日本史年表 東京堂出版1999年発行 韓非子第四冊 岩波書店2003年発行 165ページ〜 ●参考Web ザ・20世紀 http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/year/index.html |
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