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経理実践トレーニング 事業承継編 vol.2 何のために何を引き継ぐのか 動物は餌を蓄えて残すことはしないで餌の取り方を教える。それに譬えれば親は子に商売の仕方を教えても店や会社を残すことはしないとなるが、そう簡単に割り切れるものではない。しかし、経営者の方々にもう一度、「何のために何を引き継ぐのか」この言葉を噛みしめて欲しい。『経営理念』、『経営哲学』これらがなければ単に日常的な仕事をこなすだけの実務を伝えても、それを事業継承とはいわないのである。 元優良企業が大変な時代 平成不況が漸く底を打ったとの報道がなされている中で、創業30年から40年位経った中小企業が日に日に苦しさを増している。 その原因の一つに、借金依存体質から脱却できない中小企業の現状がある。その多くは、ちょうど創業者から次世代にバトンタッチしようとしていたところに到来したバブル経済とその崩壊が大きな影響を受けている。 昭和50年代後半頃から優良中小企業の事業承継対策は困難であることは指摘されていた。 非上場株式の評価が優良会社ほど高くなり、事業を承継することは株式を相続することと一体であることから、事業承継対策は株価の引き下げに重点が置かれ、その対策として借金による資産の取得がもてはやされていた。その結果が借金漬けの優良企業が多くなった。 バブル経済の到来までは、超優良企業で、自己資本比率も高く借金もそれ程無かった企業が、銀行の勧めで相続対策と称して豪華な本社ビルや工場を建てたり、賃貸料収入で安楽な老後と相続対策を含めた事業承継を夢見て新たな不動産投資をしたことが裏目に出た企業の何と多いことか。 この企業行動は旧時代の価値観では当然のこととしてもてはやされていた。ところが価値基準は一夜にして変わってしまった。 その反対に平成になってから創業された企業の方が総じて元気がよいのは、このような旧時代の負の遺産を背負っていないからといえる。 『包括根保証』は無くなるか バブル経済崩壊で大きく変化した金融機関の融資姿勢に対応する事業経営の基本的な考え方は 『含み益活用の経営』 ↓ 『資金力・収益力重視の経営』 となった。 収益力も歴史もある優良企業でも事業承継の大きな障害になっているのが個人に借金返済の無限責任を負わせる『包括根保証』である。 『包括根保証』問題は国会でも大きく取り上げられ、破産法制において再起可能な個人財産を保護することと共に検討が加えられており、法制審議会が平成16年9月を目処に保証制度の見直しの答申をまとめるといわれている。 図−1 包括根保証のしくみ ![]() 金融機関の側から見れば、今まで創業者の個人財産と経営能力と会社の財産を全てひっくるめて担保に取っていたから貸せたという事情がある。だから、代表取締役が創業者からその子供に交替したからといって創業者の包括根保証を外すことは出来ないと言う。 しかし企業側から見れば、創業者が引退して尚個人保証だけは残るのであれば何のために代表権を譲ったのかという大いなる不満が残る。 金融関係者の発言をまともに信じれば、新しい基準では、企業単体の収益力で弁済できる額が与信枠になる。だから今の貸付金額を基準に個人保証を外すにはそれなりの収益力と担保力が企業単体で必要となるという。 図−2 借金の額と返済期間 ![]() ちなみに国民生活金融公庫では、今後第三者保証のない貸付には0.9%の金利を上乗せすることを明示している。今までは、保証協会へ支払う保証料がそれに見合う制度としてあって、尚代表者の個人保証を取られていたのに代わる制度である。 第二創業は新会社で こうしてみてくると、本業は上手くいっているのに借金過多で苦しんでいる企業はむしろ子供には今の会社をそのまま引き継がせようと考えないことが重要になっている。 跡継ぎとなる子供は金融機関から連帯保証人になることを求められない内に会社から離れて、新しく別会社を興すほうがずっと上手くいく。 その時に注意したいのが先に述べた『包括根保証』の問題である。 銀行との取引を開始する最初が肝心だから、創業してしばらくの間は借金をするのをじっと我慢をして、来年の春に新法が成立し無条件に包括根保証を求めることが禁止されるのを待ち、現行制度に取り込まれないようにすることである。 というのは今検討されている制度が成立しても従前から成立している包括根保証がどの様に取り扱われるか不透明であり、金融機関側が過去に取っていた包括根保証を積極的に手放すとは考えにくいから、保証人が死亡するまでそのまま残る可能性がある。 何のために何を引き継ぐのか 未上場企業と上場企業の事業承継の一番大きな違いは、一部の例外もあるが後継者が親族であるか否かにある。 親族の間で事業を引き継ぐか否かを考える判断をするときに、最優先されるのはその家族が経済的に困窮しないかどうかが中心にならざるを得ない。 顧客第一主義で「我が社が無くなったらお客様に迷惑がかかる」などと気張る必要はない。過去に大手スーパーD社やデパートのS社が潰れて顧客の生活に何か影響があったかどうか振り返ってみれば分かることだ。 動物は餌を蓄えて残すことはしないで餌の取り方を教える。それに譬えれば親は子に商売の仕方を教えても店や会社を残すことはしないと考える方が自然だろう。 創業者は、後継者に会社を経営するのに必要な考え方を伝授する。ところが、伝授する側の親がそれだけのものを持っていない場合が多く見られる。 『経営理念』『経営哲学』それがなければ単に日常的な仕事をこなすだけの実務を伝えてもそれを事業承継とはいわない。 価値観が激変し、従来のやり方では儲からなくなってきた今こそ、後進を育てる良い機会だと捉えて、企業を継続させる近道は「人を育てる」ことだと覚悟を決めて「教育」ではなく「共育」で自分も経営理念や経営哲学を求めて共に育っていこうと部下、子供との間に信頼関係を築くことが大切になる。 その上で、後継者が創業者の抱えていた顧客に今まで以上の商品やサービスが提供できれば、そこで社会的な責任もいくらかは果たせるというものである。 |
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