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JDL Avenue vol.50 2005年1月

経理実践トレーニング 事業承継編 vol.4

事業をやめるにも工夫がいる


 前回、生業レベルでは事業承継は必要がないという旨の記述をしたが、それに対して、「我々零細業者のことは考えてくれないのか」或いは「それでも何か良い方法はないのか」という切実な質問があった。
 確かに、後継者もいない上に金融機関からの多額の借金があるような場合に会社を止めるに止められず打つ手は少ない。しかし、長年の赤字と多額の借金があっても、それが幸いに経営者個人からの借金だけの場合には、まだ上手に整理できる可能性が残っている。必死になって求めればどこかに必ず道はあるものだ。

図−1


 この様な場合、個人がこつこつと貯めてきた資金が自分の経営する会社に対する不良債権として残っているためにその貸付金債権は、回収の見込みがほとんど無いにもかかわらず相続財産となり相続税を支払う心配をしなければならなくなっていることに気が付かないでいることが多い。
 もしこの段階で相続が発生すれば、会社に対する貸付金1億円は相続財産として計算しなければならなくなってしまう。
 そこで、会社を解散して回収不能を確定させれば、少なくとも実質的に回収不能な不良債権が相続財産として課税される危険性は無くなる。
 ところが正規に清算手続をすればお金と時間がかかる。ここで一工夫をすれば、逆に、幾らかの資金が手元に入ってくる可能性が残されている。

中小企業のM&A

 バブル経済の崩壊以来、企業業績の二極分化が進んでいる状況の中では、上記のように市場からの退場を余儀なくされている企業がある一方で、新しい時代の波に乗った、新時代の企業で多額の利益が出て困っている企業も散見される。
 その両者の間を取り持って、大手企業の整理再編の中ではごく当たり前に行われていることを中小企業同士でやるだけの話しなのだが、一番小規模なM&Aといえる形で見事に会社をやめた例がある。

具体例 図−2


A社(赤字会社)
甲=A社株主・社長で貸付金債権を持っている

B社(黒字会社)
乙=B社株主・社長

ポイント
1.株式を甲から乙に二束三文で売却
2.貸付債権を甲から乙に廉価で売却
3.甲は清算費用を掛けずに収入を得られる
4.B社は買収したA社に利益の出ている事業を一部移管して、税務上の繰越損失を活用できる
5.乙はA社に対する貸付債権を廉価で取得して、額面通り回収できる

信頼できる専門家に相談

 もし、あなたがこれを実行しようとするとき、安易に他人に話しをしてはいけない。何故なら、「整理屋」の格好の餌食にされてしまう可能性があるからだ。更には、会社の内容をよく知らずに実行して隠れ債務が後から露見したら大問題になるからでもある。
 相談するなら、長年付き合ってきた顧問税理士が一番、のハズである。しかし残念ながら、多くの専門家は、これだけ手の内を曝しても、「整理屋」がしてきたような仕事だということから、関わりたがらないのが実体であり、積極的に手伝ってくれる税理士・公認会計士・弁護士等の専門家が少ないのが実状である。
 会社整理といえば昭和50年代からバブル期には「整理屋」といわれた様な輩が横行して、暴力団の資金源とされてきた感がある。
 真面目にコツコツとやってきたが、年齢と共に時代の変化に付いていけずやむを得ず退場するような企業が、最後の最後に哀しい、辛い思いをしないためにも、この様な一見マイナスに見える仕事も、専門家諸氏には頑張って積極的に手伝う心意気を持って欲しいものである。



中央会計事務所
税理士 細野知久
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