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経理実践トレーニング 事業承継編 vol.5 「経営理念」の承継が最優先、財産の承継は二次的問題 私達の仕事では、頻繁に事業承継対策の相談や後継者の育成のための勉強会を依頼されるのだが、その仕事を受けながら、根本的課題が解決されないままに事業承継の対策だけを求められることに、割り切れなさを感じている。 優良企業は問題ない 事業承継の相談に見える優良中小企業経営者の多くは、自分が死んだ後のことを心 配しているのだが、話をしているうちに思わずこう言いたくなることがある。 「いいじゃない、あなたが死んでこの会社が無くなってもお客様は困らないし、家 族や社員は死亡保険金や退職金で生活していけるのだから…」と 事業承継問題を考えるときにもっとも根本的な課題は、「あなたの会社は本当に引 き継ぐに値する会社か」ということである。 この質問にイエスと答えられてから具体的な対策を考えなければ、すべてが徒労に 終わる。 では、事業承継をする価値のある会社の条件は何だろう。 まず第一に掲げられるのは、「何のために経営しているのか」つまり経営理念が明 確になっていることが最低条件である。その理念を引き継ぐためなら多くの困難を乗 り越える価値がある。 その次が、経済的価値の有無である。 連帯保証人制度は悪習 前回までにお話ししたように、生業レベルの会社は元々個人事業と何ら変わりがな く、事業主が死んでしまえばそれでおしまいなのである。 次の段階の「家業」では既述のように、事業主の死亡が直ちに廃業に結びつくとそ こに働く社員が路頭に迷うという影響がある。しかし、業績が良く財務内容も良ければ、廃業するにも退職金を払えるし、会社の借金もきちんと返せるから何ら問題はな い。 問題が起きるのは、業績も悪く財務内容も良くない場合なのだが、この場合一番困 るのは、お客様でも社員でもなく、相続人としての家族である。 これまでも度々お話ししているように、今の日本の金融システムでは、中小企業と 個人事業は金融機関に対する債務に対しては結果的に無限責任を負っている。従っ て、借金を残して死ぬと相続人が困る仕組みになっている。 図−1 ![]() しかし、冷静に考えると、借金を残して死なれた相続人は「相続放棄」というウル トラCがあり、財産も相続しない代わりに借金も棒引きになる仕組みになっているの だから、何も心配することはない。 図−2 ![]() ところが、日本には「連帯保証人」という悪習がある。死んでゆく本人だけでな く、その相続人までが「連帯保証人」になっていることが多いから、社長や事業主が 死ぬと、直ちに連帯保証人である相続人にその負担がのし掛かってくる。 これに対抗するためには、どんなことがあっても「連帯保証人」にならないか、い ざというときは財産を何も持たないでも生きていける状態を作るしかない。 連帯保証人にさえなっていなければ、相続放棄をして、相続人などが新会社を設立 し、そこで社員と共にゼロからの出発ができる。 経営理念の相続が最重要課題 中小企業の経営者という立場の一番の魅力は何だろうか。大企業から脱サラして起 業した多くの経営者の話を聞いていると、企業の歯車になるのではなく自分の意志で 働きたいという、切実な思いがあったことに気づく。 自分の働きが自分に返ってくる、良くも悪くも、自己責任によって自分のことを自 分で引き受ける、頑張れば頑張っただけ報われる、そんな会社を作りたかった、そう いった熱い思いを聞かされる。 では、起業してから、そこに働く社員に同じ基準を当てはめて扱っているかという といささか疑問を感じざるを得ない。 自分の半生をかけて実現してきた「頑張れば報われる」仕組みとその実感を社員に も味わわせてあげたいと、心の底から思っていれば、会社そのものが魅力的なものにな り、自ずと後継者は育ってくる。 「己の欲せざるところを人に施すことなかれ」と孔子も言っている。 自分がサラリーマン時代にイヤだったことは、それが単なる逃避的な態度からくる ものなら話は別だが、今あなたの会社の社員も同じようにイヤなのだ。 自分が築いてきた「理想とする働き方」を次世代に残すのが一番大切なことであ る。 それが経営方針となって表れたのがあなたの会社の「経営理念」である。 年老いても魅力的に生きよう 近頃、老人が魅力的でないのは何故か自分に照らして考えてみると、戦後半世紀に わたり、貨幣価値で測れるものに重点を置いた価値基準が世の中を覆い、高齢者に なっても金や物に対する執着心を捨て切れていないことが、一番大きな原因だと思 う。 「事業承継」という表現をしているが、実は本音のところでは、自分の老後の経済 的な心配ばかりをしているのではないだろうか。 これに気づいてからは「自分のことを考えすぎるな、自分が魅力的に生き続けよう としている限り何とかなる」と自分に言い聞かせている。みなさん!お互い、老いて は、金では決して買えない物を次世代に残して死のうではありませんか。 |
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