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JDL Avenue vol.51 2005年3月

経理実践トレーニング 事業承継編 vol.6

会社は公器である


 戦後60年になる現在では、日本における会社のあり方も大きな転換期にさしかかっている。今年(平成17年)になってから、株式会社に関わる大きな事件が続発しているのは、その一つの現れといえる。

時代の変化と企業のあり方

 昨今、企業の社会的責任ということがやかましく論じられるが、この問題は「企業は誰のものか」という命題と密接に関係する。また同時に、「企業は誰のものか」という命題は会社制度ができて以来の重要な社会の関心事である。

 “株式会社の所有者は株主である”という意見は、アメリカ型の株主の意向を重視する経営姿勢では、当然のこととされるかもしれない。しかし、現実の日本の経済社会で、株式を過半数取得すれば、その企業を実質的に支配できる、と考えるのは法律論にすぎないことは、ライブドアの堀江氏も身をもって実感したことだろう。それによって自分の意見を強力に主張することはできるかもしれないが、だからといって、自分の主張する意見通りに企業が動くとはいえないところに、「株主中心主義」の限界がある。

企業の利害関係者



 「株主中心主義」に対して「ステイクホルダー主義」といわれる考え方では、図のように企業の利害関係者には多くの立場の人々が考慮されている。
 実際の社会における企業は、このような利害関係者によって支えられているのが現実の姿だろう。となれば、企業は株主単独で支配できるものでないことは明白である。株主もその他の多くの利害関係者と同様にその一部である。このことは、オーナー企業の事業承継対策を考える上でも見過ごせない観点である。

会社法の改正

 今国会(平成17年)で会社法が改正されるが、この改正は時代の変化に法律をあわせるという意味を持っている。
 日本の株式会社の大多数は中小のオーナー経営企業であり株主と経営者が同一人物であるという実態がある。
 旧来の株式会社制度では、株主が経営者(取締役)を任命するということを想定していたから、この様な形態の企業や上場企業の株の持ち合いなどは「想定外」だった。  更に商法に規定されていた「決算書の公告」なども形骸化しており、守られない商法の存在は、法治国家としての恥であった。
 それに対して新しくなる会社法では、現実に即して、大きく『証券市場に株式を公開する企業』と『株式の譲渡制限規定を設けている「閉鎖会社」』とに明確に分けて取り扱うことで、実態に近い法律の運用ができるようになった。

商売の基本は不変

 日常の商売において、個別の取引で全てバランスがとれるとは限らないが、全体のバランスが崩れれば元へ戻ろうとする傾向が厳然として存在することを感じる。一つの取引で儲けすぎれば、どこかでそれを元に戻す力が働いているのを感じられる感性がなければ商売を成功させる資格はないと断定できる。常に自分だけが得をしようとすれば、それは自然の摂理に背くことになるから、当然のごとく長続きはしないことになる。
 この感覚は売り手と買い手の間だけではなく、企業の利害関係者全てとの間で成り立つ。もっと大きくいえば、人間社会のどこへ行っても成立する原理である。
 商売の基本は、他人の欲するものを準備して提供するところにある。その対価は、物々交換の時代には、自分が必要とするものだった。貨幣制度ができてから、人間社会で価値の混乱が生じたにすぎない。
 渡すものと受け取るものは、本来等価であったはずである。
 ところが貨幣が介在することで、あたかも自分が提供するものがより高い価値で評価され、その対価としての貨幣がより多く自分の手元に残ることで「儲かった」という錯覚を持つようになった。それは儲かったのではなく、自分が提供したものより自分が必要としたものが一時的に少ないだけで、いずれ必要となったときのために「貨幣」という形で保管しているにすぎない。人は誰もいずれ死んでゆくのだが、それまでの一生の間により多くのものを他人に提供し、自分が受け取ったものが少なかったことが、貨幣の蓄積という形で表現されると、「お金持ち」イコール「偉い人」という図式が人々の認識の中に定着し始め、ついには「お金」が人を測る尺度にまでなってしまった。
 現代人が「お金」に振り回されていることは誠に残念なことだ。
 以上、縷々述べてきたように時代が変わっても制度が変わっても、人が商売をする上での基本は、そう大きく変わるものではないということがお分かりいただけただろうか。

利益は社会貢献のバロメータ

 私が企業経営の合い言葉として常に申し上げている「利益は社会貢献のバロメータ」という言葉には、企業がどれだけ多くの社会に役立つものを提供してきたかによって、利益が出るか否かが決まるという意味が込められている。その企業を構成しているのは先に挙げた企業の全ての利害関係者であり、その全ての人々にとって利益のバランスが上手にとれていることが企業存続の絶対条件である。
 事業承継を考える上では、たとえオーナー経営であっても、オーナー一族の利益だけを考えていたら、その時はうまくいったかに見える対策も、結局は失敗に終わることが多いのは、このことが原因している。
 くれぐれも目先の利益に惑わされることなく、一生涯を掛けた長い目で見た利益を大切にして欲しい。

最後に
 長いこと読んでいただいたこのシリーズもいよいよ最終回となった。
 経理実践トレーニングの諸シリーズをこれまで読んでいただいた読者の皆様には、耳に痛いことばかりを言い続けてきたように思う。しかし、それは全て自分に対する戒めの意味を持っていた。皆さんにこうあるべきだと言い続けることで、自分自身の経営する企業をそのようにしなければならないように自らを追い込むことしか、自分を律することは難しいと思ってそうしてきた。今後は、自分自身の事業承継を実践することでその正しさを証明することが、今まで皆さんに偉そうに言ってきたことに対する答えになると考えている。これからも、一人の経営者として魅力ある企業作りのお手伝いと自らの実践をしていきたい。
 ご愛読ありがとうございました。



中央会計事務所
税理士 細野知久
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