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資金繰り編U vol.2 資金繰りを良くする経営 2 社員の能力と社長の力 企業の健全な発達のためには、適正な利益を上げ、その一部を蓄積してゆか ねばならない。それが資金繰りをよくする最善の方法である。そのために中小 企業の経営者にとって重要なのは、御自身も含め社員全員の「役割分担」と 「責任の範囲」を明確にすることである。この役割分担という観点からも、 社長と社員はそれぞれに要求される能力の内容が異なる。 社員の能力とは、「付加価値を獲得できる力」であり「付加価値を生み出す 力」である。営業マンでいえば、自分の売上がもたらす粗利益が給料の額を上 回っていなければ、付加価値を獲得したとはいえず、製造担当者なら営業が受 注の際に示した見積原価を割って完成させなければ、付加価値を生んだとはい えない。付加価値を生み出せる社員が有能な社員である。 そして社長に問われるのは、その有能な社員を引き付ける能力である。 「この社長のそばにいれば自分の能力を十分に発揮できる」と思わせることで ある。 念のため付け加えると、固定費に分類される人件費に含まれる社員も付加 価値を生み出している、あるいは生み出さなければならないことも忘れないで ほしい。 能力のある社員には楽しく、能力のない社員には居づらい環境を作ること。 これが社長に要求される能力だといえる。しかし、それができたとしても、 目標利益を達する為に必要な売上げ高を確保するのは、大変なことである。 変化への対応 経営者と話をしていて「われわれの業界は特別で…」という表現を聞くが、 決してそうではなく、今はどの業界でも市場の状況は激変しているのだから、 自分のところだけが特別だという意識は捨て去ってほしい。 市場の変化に対応するには、自ら市場を創造するのが一番近道である。 大手企業と異なり、中小企業の市場創造は大々的な広告宣伝や市場調査による ものではない。むしろ顧客からの要求を満たすために日々努力を重ねているう ちに、本業から一歩進んで自然に新しい技術を身につけ、自社の技術の幅を広 げることができ、業種にこだわらずに新商品や新製品の開発を進めていく方法 が最適だろう。 その良い手本となるのが鐘紡である。この会社の商品構成は(図−1)の 通りだが、かつての主力商品は繊維だった。それが自社の持つ技術をベースに、 時代に要求に忠実に対応しているうちに、いつのまにか商品構成が変化し現在 のようになった。
我々の身近なところでも人材派遣業の会社が、設立当初はプラントの設計の 技術者を多く派遣していたが、それがバブル期には建設が多くなり、更に現在 はコンピュータ技術者とりわけネットワークやLANに詳しい技術者を多く派 遣している例がある。これも内容が変化した例といえる。 この業種は登録社員個人の資質によって業績が左右されるが、社会の変化に 対応し顧客からの要求に応じるには、卸・小売りにたとえれば仕入にあたる登 録社員の確保とその教育に先見性が要求される。常に時代の変化の方向を読み、 一歩先にその変化に対応できる技術を持った登録社員を確保しておかなければ、 営業担当社が安心して新しい仕事を取ってくることができない。 このような事例でも、その多くはやはり「代表取締役営業社長」の線から抜 けきれていない場合が多く、社長自身が先頭に立って動いているうちは、長年 の経験と勘で、変化に対応できているのだが、社長が営業の第一線を退き、他 の取締役や社員にやらせると、とたんに変化に対応できなくなる。そこで、社 長自身の頭の中で組み立てていたであろう考え方を今のうちに後進にしっかり と教育する必要が出てくる。後進の指導の手段としても是非、図解損益計算書 を体得し活用することを心がけてほしい。 目標付加価値を確保するP×Qの組み立て方 前回、目標付加価値を稼ぎ出す社員の具体的行動計画を引き出すために、 売上はP×Qで考えようと申し上げた。つぎの事例を、経営者が社員により 単純明解に説明していただく材料の一つとして役立てていただきたい。 (図−2)
ここではソフトウェアの開発をしている企業を例にとって考えてみよう。 この業界では、開発要員は客先の社員と一緒になって開発や納品時の設定を することが多く、実質的には人材派遣をしているのと同様の状況が生じること が多い。このことから固定費計画の人件費には現場の人件費は含まずに考える。 つまり現場の人件費を変動費と捉えて計画を立てる。 次に、売上の基本単位をどのように考えるかが重要な要素となる。ソフト ウェア会社でも受注形態によって異なるが、この場合には下記のように組みた てる。 一人当たり平均値 P (売上単価) 48万円 vP(変動費) 36万円 mP(付加価値) 12万円(付加価値率25%) 目標付加価値÷mP(単位あたり付加価値) 10,000万円÷12万円≒834万円(必要延べ人員) 834人÷12ヶ月≒70人 常時必要な開発要員は70人となる。現在の開発要員が60人であれば、目標 付加価値を達成するにはあと10人不足している。 この10人の不足をどう補充するかは、現状とこれからの営業方針の両方から 判断する。高度の開発能力を要求される仕事に手が不足しているなら、人数 (量)よりも質に重点を置いた採用をし、平均値を上回る種類の売上を確保 する。あるいは、時間さえかければこなせる仕事が多いなら、専門学校卒の 若手を多く採用することで単価は下がるが、仕事の量(Q)を増やす方向を 狙うことも可能である。 また、現在の人員のままでも各人の労働時間に残業の余地があり、現場の 社員も残業代を稼ぐことを希望しているなら、その分は増員ではなく残業を 増やすことで乗り切れないか検討の余地がある。 上記の平均値はあくまでも平均であり、実際にはその前の段階で、仕事を 分類し、その種類毎の単価を設定して営業をしているのが実態である。事業 種目は異なっても、この基本的な組み立ては変わらないので、他の業種でも 同様にできる。
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