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JDL Avenue vol.4 9709
資金繰り編U vol.3

資金繰りを良くする経営 3


職場は一将の影

 先日中小企業経営者と一緒に大阪府八尾市の八光信用金庫常務理事中川政雄 氏の話を聞く機会を得た。
 「いっしょにやろやないか!」と題した講演で、中川氏の失敗談からは中小 企業経営者には身につまされることの多い、そして、実名をあげての取引先企 業の自己破産を回避させた話などは、信用金庫の常務と中小企業の社長という 関係を越えた人間対人間のつきあいを感じさせ「こんな信用金庫なら是非取引 がしたい」と中小企業経営者の胸を打つ話だった。
 「職場は一将の影」という言葉を引用して、支店の営業成績が良くなるのも 悪くなるのも全部支店長の影響だと言われた。中小企業に置き換えてみれば、 売り上げが伸びないのも、会社が赤字になるのも、ダメな社員がいるのもみん な社長の責任である。がむしゃらに社員の尻をたたけば一時的には成績も上が るが、次には必ず破綻が待っている例を数多く見てきた。よく「社長が変われ ばみんなが変わる」といわれるが、長期にわたって成績の良い会社の社長は必 ず魅力的ですばらしい人柄である。

営業戦略と固定費・変動費

 大口の資金調達をして変動費たる資金調達費用を引き下げようと大口定期預 金が流行ったことはご承知の方が多いと思う。しかし同金庫は小口預金を集め るのはコストが高くつくという常識を打ち破り、顧客のセグメントを決定する 基準となるのは「収入額」でなく「収入源」であると喝破して、それにぴった りと合う商品を開発した。それは50万円までは金利がスーパー定期1年ものよ り更に1%高いという預け入れの上限金額を定めたボーナス定期預金だった。
 たとえ預金量が下がっても収益構造を変えるという明確な目的意識と相まって、 みごとに多くのサラリーマンの支持を受けた。
 中小企業でもこのような場合、往々にして目的が不明確になり売上金額を伸 ばすことに汲々としてしまう。その結果、本来の目的は「固定費を上回る付加 価値を稼ぎ出し、企業全体として利益を上げること」なのに、社長の業界にお けるメンツや銀行に対する見せかけの業績のために、または資金繰りのために 赤字でも受注するという愚かなことをしていないだろうか。
 資金繰りのために仕事をしている状態になったら、その会社はもう自分の 会社ではなく債権者の会社となっており、自分は借金製造機と化しているのに、 そのことに気がつかない例も沢山ある。(図−1)

図−1

 大口定期を獲っても一見変動費と思えるようなお客様に配るセールスプロ モーション用品は減らないし支店の営業マンの数も減らない。何故か、それ らはもともと固定費なのだから減ることはない。であれば、利益を出す方法は 「固定費を上回る付加価値を稼ぎ出す」これしかない。
 固定費を上回る付加価値を稼ぎ出すには、Pをupする(大口定期をドカンと 取る)かQをupする(小口の定期を数多く契約する)か、はたまた付加価値率 を上げるか選択することを迫られる。図−2のようにその組合せは山ほどある が、どの選択をするかは前述のように目標を見失わないようにし、そのための 具体的な戦略がなければならない。
 現実にはそんな会社はないが、固定費ゼロの会社はつぶれない。逆説的に 表現すると「固定費の多い大規模の会社ほど常に倒産の危険性をはらんでいる」 といえる。しかし、F=mPQ(損益分岐点)の意味を、「固定費を上回る 付加価値は絶対に稼ぎ出さなければ会社はつぶれる」と理解し全社員にその ことを徹底すれば、売上至上主義の呪縛からも逃れられる。

中小企業の特質を生かす

 同金庫では地域社会と共に繁栄することを原点とし、地域金融機関としてあ くまでも地元に密着し地域社会の発展・繁栄に奉仕する姿勢を貫いている。 先の小口預金の新商品も「信用金庫は銀行の小さいものか」と改めて自社の 独自性を問い直し、都市銀行のやらないこと、やれないことを徹底的にやると いう結論に基づいて出てきたものである。
 大手企業のバブル期の不始末の処理法方の中に垣間見えた「担当者を転勤さ せてしまえば問題は片付いた」という姿勢と対照的に、お客様にとって地元企 業は「ここしかない」から、「逃げることができない」から安心してつき合え る会社なのだ。中小企業はネームバリューがないからこそ中身で勝負する必要 がある。
 皆さんも同様に「中小企業は大企業を小さくしたものか」と自らに問いかけ て、創業の精神に立ち戻って、「何のためにこの仕事をするのか」を徹底的に 検証し、小規模だからできること、小規模でなければできないことを徹底的に やってほしい。単なる金儲けのために会社を興したのではないはずだと私は信 じております。「利益は社会貢献のバロメーター」というのは永続的に利益を 上げている会社を見れば明らかでしょう。

図−2 付加価値を稼ぎ出す手法の組み合わせ

八光信用金庫ホームページのURL
http://www.hakkoshinkin.co.jp/

中川政雄氏の著書
いっしょにやろやないか!!
(職場は一将の影)
近代セールス社刊

中央会計事務所
税理士 細野知久
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