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JDL Avenue vol.7 9803
経理実践トレーニング 資金繰り編U vol.6

資金繰りを良くする経営 6


資金繰り倒産の回避が当面の課題

 不良債権を大量に抱えた銀行は今「早期是正措置」による業務停止命令を回避するために 必死の努力をしているが、政府の金融安定化策としての公的資金の投入による自己資本比率 の改善策は、内容の良い銀行と悪い銀行の格差をますます広げ二極分化を引き起こすだろう。
 企業経営者としては自社の取引銀行が「早期是正措置」による業務停止命令を受けそうで あれば緊急に取引銀行を変更しなければならない。そこまでいかない銀行でもいざという時、 銀行の態度はどうなるか、定期預金を解約して資金繰りに使う等ちょっとしたジャブを打って 確かめてみる必要がある
 この稿が皆様の手元に届く頃には銀行と中小企業の関係は一層悪化して、貸し渋りから回収 強化へ、さらには利上げの方向へと推移しそうだが、そうならないことを心から祈っている。 今多くの中小企業にとって信用収縮のあおりによる「資金繰り倒産の回避」が最大の経営課題 といえよう。

企業主導の返済条件の変更を

 銀行からの新規融資が見込めないなら、「金繰り返済」で資金繰りが成り立っていた会社は、 返済額を「収益返済」の範囲に強引にでも切り替えるしか生き残る道は残されていない。
 都市銀行が大手企業の再建にあたるときは元本の棚上げや貸出金利を下げたりと銀行の側から 条件を提示するが、中小企業に銀行の側から再建に協力するために融資条件の緩和を提示するこ とや元本の棚上げに素直に応じてくれること等とうてい期待できない。こういう状況の中で銀行 からの回収強化に対応するには、企業が主導権ををとって返済条件の変更を求めることが必要な のだが、そうなれば当然これ以上借入金を増やすことは出来ないし、手形割引を依頼するわけに もいかないのだから、経営者にも今後一切銀行を当てにしない経営をする相当の覚悟が必要となる。 (注)

     図−1 借入金返済計画表  [表のダウンロード]


銀行との正常な関係

 利上げ傾向になる根拠は、銀行の立場になって考えてみるとよい。
 銀行の収益源は貸付金の利息なのだから自己資本比率の改善のためとはいえ、貸付金の回収は 長期的には銀行の収益力の低下をもたらす。そうなれば必然的に収益を確保するためには残った 貸付金の利率の引き上げるが次の手段となる。  銀行の本来の融資姿勢は、確実性と安全性にあったはずである。つまり融資担当者が上司に融 資案件の書類を回すとき、収益力や取引先企業あるいは預金などの資産内容から返済が確実にさ れるか、また万一主要取引先の倒産などにより連鎖倒産が発生した場合でも不動産・有価証券な どの担保物件で貸付金の回収ができるか、について判断できる資料を添えるはずである。
 この二つの基準を満たしたとき初めて貸せるというのが、与信管理の本来のあり方ではないか。 バブル期に街金融と同じ発想になってしまった銀行が、本来の姿に戻るべき時が来たが、残念な がら現在の銀行は責任がとれない故の決定権の無さからくるサラリーマン特有の責任回避体質が 蔓延してあつものに懲りてなますを吹く状態になっている。
 こうした状況の一方では大手企業に見切りを付けた技術者たちが起こしたベンチャー企業が銀 行の新たな貸付先として注目を浴びている。
 ベンチャー企業の多くは技術力は持っているが市場の開拓をするための資金が全くないに等しい。 貸し渋りや強制的な回収をする一方では、新規の優良貸付先を発掘し、出来るだけ高金利で貸し 付けたいのが銀行の本音である。
 しかし急成長企業ほどリスクは大きいのは常識といえる。こうした企業に銀行が融資をするには、 しっかりした事業計画の有無がものをいう。以前にも述べたが融資担当者が社内稟議を書きやすい ようなしっかりした資料を添えることで、銀行が喜ぶプロジェクトファイナンスが出来上がる。
 急成長をしている経営者に「永続的な発展のためには踊り場は絶対必要」だから、そのためには 企業を外部から客観的に見てくれる幕賓を置かなければとよく申し上げている。
 また余談ではあるが、今後土地建物など不動産の価格決定要素は利回りになることが確実になる ことから、設備投資としての不動産購入資金の返済計画も収益返済を厳しく求められることになる だろう。
 銀行の融資姿勢が正常な状態に戻ったらその時は、銀行に借入の申し込みをするとその都度経営 診断をしてもらえるような状態になる。銀行が融資をためらうようであればその企業は経営に無理 があるという判断材料になるような状態が、銀行と企業の正常な関係である。一日も早くその様な 関係が復活するように経営改善の努力をすると同時に銀行に働きかけて下さい。

「収益返済」と「金繰り返済」

 本来銀行はキャッシュフロー(税引後当期利益+減価償却費)をベースに返済可能額を計算し、 当期の計画・実績による返済額がそれを大きく上回る様なら「収益返済」は不可能だと判断する。
 しかし、収益返済では年間1千万円しか返済できないのに銀行との約定では年間3千万円の 返済をしているような場合に、ある程度返済が進むと担保に余裕が有れば差額の2千万円につ いて再度貸し出しをすることが経常化しており、それにより従来は資金繰りが成り立っていた これを「金繰り返済」と称している。
 尚この考え方の詳細はこのシリーズの1回目から何度か繰り返し述べているのでそれらも参照 されたい。

注: この実務についての詳細は宮本孝著「今こそ銀行取引を変えなさい」WAVE出版刊 にあるので確認してほしい。また中途半端な覚悟でこれをやり失敗をすると取り返しのつかないこ とになるのでくれぐれも慎重に事を運んでほしい。

*文中「銀行」とあるのは銀行・信用金庫・信用組合等を総称している

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