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JDL Avenue vol.10 9809
経理実践トレーニング 資金繰り編U vol.9

資金繰りを良くする経営 9


摂理を知り経営哲学を本物に

 社長の仕事は「決心をして実行する」ことである、あるいは 覚悟すると言い換えても良い。 どのように決心するのかは、その人の人生経験や生き方により様々であるが、厄介なことには、 それが正しいかどうかは、すぐには分からず、後になってようやく分かるから常に「正しい」と 思うことをやってみて、良い結果が出なければ「正しくなかった」と結論づけるしかない。
それだからこそ「経営哲学」が大切なのだ。社長の経営哲学が本物であれば、会社の仕事のた めに社員を作戦通りに動かすのではなく、社員が一緒になって動いてくれる。本物かどうかは、 一見自分のためにやっているようでも、そのことが本当に世の中の役に立っているならうまく行 くが、反対に自分の利益にはなっているが、他人を害しているようなら必ずしっぺ返しがくる。 これで分かる。これは私のつたない経験からも言える実感である。
 皆様が良くご存知の経営者では、イエローハットの鍵山社長・ダスキンの創業者の鈴木清一氏・ 現会長の駒井茂春氏などがそうしたことを実践し証明してくれているのはご承知の通りである。
 私の師匠である梅谷忠洋先生は、「そのためには摂理を知り切れ」といい、摂理を知り切るた めには訓練が必要だといっておられる。そのためにM&Uスクールという学校を開き、その学校で 「呼吸・集中・イメージ」を身につけるための授業をされている。「ものごとは決心したら九分ど おり成就している」「この世の中のすべての現象は人の心の中の想念が引起こしている」ともおっ しゃっている。
 また、今の日本の経済・企業経営の悪さは多分に「マインド不況」の要素が大きい。だから今我 々中小企業経営者は愚痴をこぼしている場合ではない。みずからが果敢に挑戦し、実践する以外に 助かる道はない。
 驚いたことに最近では同じことを他の多くの人々も言うようになっている。そして現実に目を向 けると方々でそれが事実となって現れてきている。また私の知っている限りでは、ビル・トッテン 氏と塩谷信男氏のお二人もそのことを指摘されており、その大切さに気が付き、実践に移した多く の経営者は既に最悪期から脱出している。このことからも経営者の皆様には、是非何らかの形でこ うした訓練を受けることをお勧めする。

グローバルスタンダードに惑わされるな

 今マスコミで盛んに喧伝されている多くはグローバルスタンダードではなくアメリカンスタンダ ードもしくはアングロサクソンスタンダードに過ぎないということに気がついている日本人は沢山 いる。金融ビッグバンで日本の国内でも世界的規模の競争原理が導入されるが、今のこの危機的な 状態を脱却するためには、日本人が本来持っていた勤倹貯蓄などの庶民感覚を大切にしなければな らない。たとえば、我々の一世代前の人々の価値観である「借金は悪だ」「自宅を抵当に入れるな んてとんでもない」「お天道様と米の飯はどこへでもついて回る」等々の庶民がずっと言ってきた 言葉は日本人の倫理観と経験・自信に裏打ちされた大切な日本の文化と言っても過言ではない。 これこそ自己責任を強く意識するからこそ身についた世界に通用する規範である。それを簡単に捨 て去って良いのだろうか。
 貸し渋りはけしからん、政府の政策はなっとらんなどといっても始まらない。それよりも、バブル 経済以前の庶民の感覚に戻り、絶対に会社をつぶさないぞという決心の下に、全社員の心を一つに して自社の経営にとって必要なことを一つでも確実に実行することだけが、自らを救う唯一の方法 である。
 銀行と中小企業の関係を例を挙げれば、地元密着でなければ生きて行けない信用金庫や信用組合 などは地元住民からしか預金を集めることはできないし、地元企業にしか貸付けをすることもでき ないのだから、中小企業の側もそこのところをしっかりと認識して付き合うことが大切になる。
 社長だけでなく地元住民である従業員やその家族にもそれを理解させて預金協力ができることも 大切になる。預金協力とは銀行側から見れば無担保・低利、かつ取り付け騒ぎでも起きない限り、 一度に多額の返済の心配の無い資金調達を意味するのだから。
 しかしその前に、現状の萎縮しきってしまった銀行員一人一人の考え方が改善されるように働き かける必要性が有りそうだが、今のような時代にあっては、それもまた経営者の仕事だといえる。
 今、銀行はようやく本来の融資基準を取り戻しつつあるが、その過程で振り子が今までとは反対 側に大きく振れているところから過度に慎重になりすぎて、現場の支店長も本店の審査部も、本来 持っているはずの得意先を適切に判断する能力が硬直してしまって臆病になっている状態だから。
 金融ビッグバンは世界的規模の金融競争のためには必要なことかもしれないが庶民・中小企業者・ そしてそのパートナーたる中小金融機関には決して恩恵をもたらさないことは周知の事実である。 中小金融機関の経営者にもそのことを早く気がついてほしい。もし分かっているならいっときも早 く大きな声を上げてほしいものだ。そのためにも、この記事をお読みになった方が、取引銀行にそ の趣旨のことをどんどん主張してほしい。そんな日々の小さなことの積み重ねでしか世の中は変わ らない。
 我々は新しい金融システムの再構築のために、この秋には昨年に続き、多くの中小企業家ととも に再び行動を起こす準備をしている。

図−1

図−2

自立企業は独自性がある

 「他に依存しない」自立型の経営を実現するには自らを律する「セルフ・マインドコントロール・ 自己抑制」が大切になる。前述のように摂理を知り、常に自分を客観視し、自社の社会的な位置を 確認し、その上で行動する。それができなければ正しい経営哲学を身に付けることはできないし、 独自性など持ち得ない。独自性の無い企業経営は決してうまく行かないだろう。
 独自性とは、個人レベルで言えば「あなたでなければだめだ」といわれることであり、企業なら 「同じ物を買うならお宅から買いたい」といわれることだ。既述のようにそうした絶対的な信頼を 得るには「凡事徹底」こそ一番大切なことである。
 また、「この仕事は我が社でなければできない」という状況を作ることでもある。当事務所のお 客様の中でこの不況にもかかわらず利益を出している企業は、全てこの独自性を持っている。A社 は非鉄金属原料の再生利用の技術を過去30年にわたり少しずつ改良し、その分野でA社の右に出る ものはいない。B社では製造会社等の構内作業を一手に請け負い、リストラで人手が少なくなった 企業の人材確保の貴重なパートナーとなり客先企業の固定費削減に大いに貢献している。
 これからは、企業規模の大小が優劣を決めるのではなく、独自性が収益を生み経営を健全なもの にして行く。規模ではなく経営内容の善し悪しで金融機関の態度が変わるのだとしっかりと認識を 変えることが大切だ。
 最後に今回も申しあげます。
 f=mPQ(今日の固定費は明日の付加価値)です。

 今日やったことは明日の付加価値を稼ぎ出すためになっていますか?


*梅谷忠洋氏 M&Uスクール学長
 昭和27年兵庫県西宮市生まれフルート奏者
 演歌「思い出酒」(歌:小林幸子)の作曲者
 M&Uスクール心華寺研修道場
 京都府宇治市神明石塚66
 TEL 0774-44-5380
 FAX 0774-46-4495
 M&Uスクール東京事務所
 TEL 03-3867-0141
 FAX 03-3867-1535

*ビル・トッテン氏 「日本は日本のやり方で行け」PHP研究所刊の著者
 株式会社アシスト社長
 1941年米カルフォルニア州ロングビーチ生まれ

*塩谷信男氏 「大断言」東明社刊の著者
 明治35年3月 山形県上の山町生まれ 医師

 
正誤表:既刊の記事中に誤りがありました。
98年5月号39頁4行目
正:経常収支 誤:経常収入

98年7月号27頁11行目
正:「…、変動比率を小さく」
誤:「…、変動比率を大きく」

中央会計事務所
税理士 細野知久
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