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JDL Avenue vol.33 2002年5月

経理実践トレーニング 資金戦略編 vol.2

新しい時代の資金戦略 2


経営形態と資金戦略

 一口に中小企業といってもその中身は千差万別であるが、資本金や取引金額・従業員数等で分類するのではなく、経営方針や経営手法を基準に分類してみると、その本質がより明らかになる。

図−1生業・家業・企業

 上記の3分類の中で新しい時代が予定している証券市場における「直接金融」を中心とした資金戦略を選択できるのは、基本的には3番目の「企業」としての性質を備えたものだけといえるだろう。
 しかし、現実には1番目2番目に分類される中小企業が殆どであり、そうした企業こそが今の日本経済の重要な部分を支えていることも否定できない。
 現状では同族経営の殆どが「家業」の範疇に入りそうだ。創業者の子供だというだけで、無条件に後継者になるなど、株式市場に上場した後でも創業家一族が経営陣の中心的な位置を占めている場合が見られるが、その弊害も多く、むしろ落語の世界に出てくる様な、放蕩息子を勘当して、丁稚・手代・番頭と昇進してきた者に娘を嫁がせて身代を守るスタイルの方が、同じ「家業」といっても現在より優れた経営手法を取っていたとも言える。
 同族経営の弊害を取り除き、かつ新しい時代の資金戦略を取り入れるには、中小企業といえども「家業」から脱却し「資本」と「経営」を分離することが必要となる。
 本来、直接金融を前提とした「株式会社」制度においては、「資本」を提供する者と「経営」をする者は異なる役割を持っている。資本家は企業目的に対して投資をして、その成果から「配当」を受け取るか、または株式の値上がりによる利益を獲得することを目的としている。その為に、経営を委託する「取締役」や「監査役」といった役員を選任する権限を株主総会で行使する。然るに、株式会社制度の本質をゆがめている「持ち合い」があり、個人株主が少なく株価操作がし易い今の日本の株式市場ではその機能が充分に働くことが期待できない。
 この様な状態の中では、いくら政府が掛け声をかけても1400兆円といわれる個人資産の多くが株式市場に移っていくとは考えられない。
 それでも、企業経営は続けなければならない。そこで、株式市場が正常な状態になり、中小企業金融の機能が回復するまでは、「資本」と「経営」の分離までは出来なくとも、従来の銀行借入中心の資金戦略を捨てて、中小企業が自らの力で新しい経営スタイルを築き上げて欲しい。


NPO型経営

 中小企業だからこそ出来る経営形態として、「NPO型経営」を提言したい。これは別の表現をすれば「社員参加型経営」といっても良いし、「利益を出さなくても成長する会社」といっても良い。
 中小企業の多くは地域にしか生きられない企業の特質を持っている。


 この2点から社員と顧客が同一地域に存在することになる。

図−3 地域社会の資金循環

 このような立場におかれた企業は闇雲な拡大を目指す姿勢を捨て、市場規模に合わせた適正規模を維持し、雇用の確保に優先順位を置き、企業に利益を残さないで社員に分配する方針を立てたらどうなるだろう。

 その場合は企業の存続を維持するためには資金が必要とされるので、その資金を社員が提供してくれるような仕組みを考える必要が出てくる。
 あなたが、社員だったら自分の働きに応じた給料が正当に支払われる事を当然だと思うだろう。そして、充分な給料を受け取り、生活に余裕があり、会社には資金が必要であり、その資金がなければ会社が存続できないとすれば、当然に職場を確保する事を考えないだろうか。  従来のように、企業を存続させるために利益の中から約半分を税金に支払い、残りの資金をようやく留保し、その挙げ句に支払った税金が耳目を疑うような使われ方をしているのでは、「自分達で稼いだお金の使い道を自分達で決定したい」という欲求が生じるのを誰が押さえることが出来よう。
 会社と社員がその点で合意できれば、まず、基本となる給与を定めて支給し、その上で利益が上がったらその殆どを社員に決算賞与として支給してしまうのだ。これで利益の半分が法人税等として消えてしまうことが防止できる。各人に支給した賞与には当然所得税が課税されるがその率は法人税と比較したら俄然低い。社員はその資金を会社に貸し付け、その貢献度はその後の社員の評価に反映される。このとき大切なのは、賞与の支給基準・貢献度の評価基準を事前に明確にしておくことと、評価の内容が社員に公表されることである。この基準がハッキリしていれば、利益が出たら社員はその成果配分に与れるという因果関係が明確になり、会社に資金提供という形での貢献をすればそれも亦評価されることになり、勤労意欲が向上すること間違いなしである。

 また、将来自分が経営者になりたければ、資本金を払い込むことでその意思表示が出来る社員持株制度も必要となってくる。  更に大切なのは、長期的には金融機関との取引で代表者の個人保証を必要としない会社にしてゆくことを目指し、従来のように経営者だけが資本金を出し、不足資金は個人資産から貸し付けをし、金融機関からの借入には個人保証という無限責任を背負っていたときには許されていた経営者のわがままを自制することである。
 こうすれば、未公開企業といえども、企業を存続させるための資金は広い範囲から集めることが出来るし、同族企業の弊害とされている単純な世襲制は排除され、次世代を背負おうという積極的な社員を輩出させることが出来る。
 この仕組みの、資金戦略上のメリットを会社の経理の感覚で表現すると、現在の税法では配当金は税引き後利益から支払われると考えている、それに引き替え借入金の利息は営業外費用となる。資金調達コストで比較した場合、借入金に軍配があがる。

 貸付をした社員の側から考えると、同じ金額を銀行に預けても利息は付かないに等しい、それに対し、会社に貸した資金には1〜2%の利息が期待できる。貰った利息は確定申告の必要があるが、金額が大きくなったら、会社は社債を発行することを考えておけばよい。社債の利息なら源泉徴収で税金を納めるので確定申告の煩わしさから解放される。

狭い地域での金融のあり方

 全国の中小企業がこのような自前の資金調達方法を実行し始めたら、地域金融機関の融資姿勢は転換せざるを得なくなってくる。
 上記図−3のように地域金融機関が地域内で集めた資金の運用先が無くなれば、資金運用に困りリスクの多い外国債やデリバティブに手を出さざるを得なくなり墓穴を掘ることになる。それを回避するには、必然的に地域で集めた資金をその地域の活性化に繋がるような方向へ資金供給をしなくてはならなくなる。
 金融情勢の変化を待っていられない我々中小企業経営者としては、自らの手で実践をし社会状況を変化させ、金融政策の変更を迫るのが、座して死を待たない最善の方法である。

 皆様が毅然たる態度で経営革新・社会革命を行っていただけることを大いに期待します。


中央会計事務所
税理士 細野知久
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