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経理実践トレーニング 資金戦略編 vol.5 同族経営の理想と現実 3 上場企業における同族経営の弊害 ここ数年連続して行われている商法改正の一つの側面には、コーポレートガバナンス(企業統治)に関する部分がある。 ところが企業のセルフコントロールどころか、昨今の新聞報道で明らかなように、ワンマン経営は中小企業の専売特許だと思っていたら、とんでもないことに上場企業でも創業家の同族・ワンマン経営が行われていたとは、怒りを超えて、情けなくなってしまう。 以前にも申し上げたが、「同族経営」そのものが悪いのではない、「企業の社会性」に反した「独善経営」がいけないのである。 これからも起業家がたとえ上場を果たしても経営者に創業者としての思い上がりがある限り、未上場の中小企業経営者で高い精神性をもった経営者には遙かに及ばないことを心に銘記しておいて欲しい。 バブル経済の到来までは世界中でもてはやされた日本的経営の良い部分は企業の「精神性」にあった。トップは常に自己研鑽を続け、それに憧れをもった社員も「勤勉性」を軸に自己を磨き上げるところまで働いたものである。NHKのTV番組「プロジェクトX」が人気を博しているのは、無名の社員たちがその力を出し切った成果として日本経済をここまで発展させてきたことに共感を覚えるからではないか。 かつて多くの創業者は自ら進んで師を捜し求め帝王学を学び、後継者もまた当然の如くそれを学んだものである。現代には多くの経営者が師と仰ぐような人物がいないのだろうか。決してそんなことはない、いないのではなく求めて無いのではないだろうか。いつの時代にも高い精神性をもった人物は必ずいるものだ。しかし求める側が、本当に真剣にならなければ、その人が目の前にいても気が付かないと言うのが実体ではないだろうか。 魅力のある人物としてしばしば西郷隆盛が引き合いに出されるが、とりわけ、西南の役に豊前中津藩から参戦した中津隊の隊長増田宋太郎が一人西郷の下に残るに際して部下に言った言葉が思い出される。 いわく、「吾、此処に来たり、始めて親しく西郷先生に接することを得たり。一日先生に接すれば一日の愛生ず。三日先生に接すれば三日の愛生ず。親愛日に加わり、去るべくもあらず。今は、善も悪も死生を共にせんのみ」と。 その魅力を体感できるのはやはり同時代に生きた人間のみに許される特権である。いま一時代前に指導者を求めても仕方のないことである。同時代に生きている人の中から学び取ることが出来なければ真の教訓は得られない。 遵法精神を持ち決算を公開しよう 私のクライアントに「会社は『公器』です」と平然と言い切る社長がいる。100%社長が出資している会社でも、心底からそう思って経営していれば間違いは起こらない。 以前に提案したNPO型経営のように互助的に経営者と社員だけがお金を出し合って運営してゆける経営スタイルは日本的な村社会を形成する。しかし、たとえ互助的とは言えども少しでも他人様からお金を預かる限り、その企業は「私」的なものではない。 会社を「公器」と思う気持ちがあるならば、商法の改正を待つまでもなく、株式会社は毎年一度必ず株主総会を開催しなければならない。したがって株主総会・取締役会を法令に従って開催しているか、またしっかりと開催しているなら形骸化していないかを再点検しよう。法を守ることは企業経営者として「最低限」の資格である。 時代が大きく変化している中で、中小企業にも決算書の公開が厳しく求められるなど、社会全体で求めている方向は決して間違っていない、それを確実なものにする為に我々中小企業家は自らが率先して企業として守るべきルールを毅然として守ってゆくことが大切である。 インターネットのホームページ上に決算書を公開することが平然と出来る企業になることは、資金調達の側面からも重要である。 経理を公開すると言うことは実は大変重要であり、かつ労力を要することなのだ。経営者の意識が低く公私混同が平然と行われている状況で、下手に経理を公開したらかえってマイナス面ばかりが目立ってしまう。逆に自信を持って決算内容を公開できる体制になっていれば、その決算が今期は赤字でも、それは金融機関が融資する基準になりうる決算書となる。金融機関が担保主義・保証人主義・保証協会主義から脱却することを願うのであれば堂々と決算書を公開し、その内容で勝負しよう。きちんとした計画に基づいて経営され、その結果一時的にこの決算期は赤字になっているのなら、資金調達は必ず出来る。 資金戦略の切り口 このシリーズを資金戦略編と称し連載していて、なかなか具体論に入れないのは、大企業・中小企業を問わず、資金戦略を検討する前提条件が満たせない企業があまりにも多いから、つい、そこに論点が集中してしまうからで、次回からは、出来る限り具体論を提示していきたい。 その予告編として、資金戦略を考える上での切り口を下記に示す。まず手始めにその中から貸借対照表に関する部分を図示したので資金戦略を考える上での参考にして欲しい。
次号では、それぞれの矢印の持つ意味を解説する予定だが、貴方ならどうイメージするかこの1ヶ月の宿題としておきたい。 1.貸借対照表から考える @資産の資金化を図る A負債の再検討と資金調達 B資本の増強による資金調達 2.キャッシュフロー計算書から考える @営業活動CF A投資活動CF B財務活動CF 3.資金運用期間で考える @超短期資金 A短期資金 B長期資金 B超長期資金 4.資金調達先で考える @出資者・経営者 A銀行・信用金庫等 Bリース会社等 Cお客様 D仕入先 E社員とその家族 F地域社会の人々 何の為の資金戦略か 資金戦略を考える上でその資金を「何の為に」使うのかが一番先に検討されなければならないが、それを掘り下げてゆくと究極的には「経営理念」「経営哲学」までたどり着いてしまうのだが、その論議は別の機会に譲ることにして、本来お金はそのもの自体には価値がないということを再認識して欲しい。お金は、何かをしたり、ものの価値を表現する為だけに必要なのでありお金を稼ぐことが、企業経営の究極的な目標になってしまってはまさに本末転倒である。 筆者が常に「利益は社会貢献のバロメーター」といっているのはそのことである。 今世界中で論議されている金融資本中心の「経済最優先主義の弊害」はまさに「金儲け」が企業経営の目標・目的になっている、そこから出発している。 |
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