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JDL Avenue vol.40 2003年5月

経理実践トレーニング 資金戦略編 vol.8

資金運用期間から考える 1


やっぱりお金が足りない

図−1*
sikinsenryaku08_1.gif   経営者と話をしていて一番困るのが「利益が出ているのにお金が足りない?!。先生、計算が間違っているんじゃないの?!」と言われることです。
 これほど原因は単純で、しかし説明してもなかなか分かってもらえないことはありません。
 「金は天下の回りもの」とか「“おあし”と言うくらいだからジッとしちゃあいねえよ!」とか、はたまた「“おあし”どころか羽が生えてらあ!」といわれるように、「お金」と言うものは、本来それ自体に価値があるものではなく、何か必要なものを手に入れる為に使う道具なのであります。
 ところがどういう風の吹き回しか、戦後50年間は「お金」を貯めることに価値があるかのような妙な錯覚に陥ってしまっていたらしい。その挙げ句国民の保有している「金融資産」なるものは1400兆円とも1500兆円ともいわれています。
 庶民がお金を貯め込むというのは、将来に不安を持っていることの現れなのです。庶民が少ない稼ぎの中からコツコツと貯金したお金を一部の特権階級が掠め取るような仕組みは一日も早くぶち壊さなければなりませんね。
 経済が活性化するということは、「お金」が充分に貯まっていることではなく、蓄えたお金が必要に応じて充分に回ることなのです。
 改めて申し上げます。「お金は貯め込んではいけません!貯め込むとその毒素で会社も人も社会もダメになります」これが“経営”と“経世済民”の基本です。
 では、回す為にどう考えればよいのでしょう。


お金の回し方

 マルクスの資本論を待つまでもなく、「商い」は
sikinsenryaku08_2.gif 
図−2


元手

商品

元手+α

の循環の中で、儲けの分だけ増殖していき、人はその増殖した一部を使って生活を営んでいます。
 ところが、現実の世界はマルクスの教科書のように単純ではありませんので、儲かったお金はうっかりするとすぐに、別の所に飛んで行ってしまいます。
 意図的にお金を回すときは、「早く回さなければいけないお金」か、「ゆっくりと回すお金か」を判断しましょう。そしてその目的に沿って調達する方法も考えるのです。
 このことを会計的な発想では「資金運用期間」と表現して
@超短期資金
A短期資金
B長期資金
C超長期資金
に分けることが出来ます。

超短期資金

 回収できるはずだった売掛金が当日になって集金できなくなった、その結果、今日3時までに当座預金にあと1万円を入金しなければ手形が不渡になってしまう。
 明日になれば確実にその資金は手許に来るのに、今日・唯今現在1万円が足りないことが、会社の命運を左右するのです。
 こんな状況の時、あなたが経理担当者だったらどんな行動を取るだろうかと考えて下さい。
 様々な行動パターンが浮かび上がってきますね。このときのイメージの湧く量であなたの資金調達能力は判定できます。社内には形を変えてお金がごろごろ転がっているはずです。
 こんな状況が起きること自体「金欠病」なのですが、こんな時にすぐ安直に商工ローンやサラ金などを思い浮かべるようでは、あなたの会社はもう末期症状が出ています。

短期資金

 「運転資金」が不足すると一口に言いますが、資金が不足する原因を調べてみましょう。
@仕入が先行することで立替が発生する
A売掛金の回収状況が悪い
B余分な在庫が増えている
原因によって対処方法は違ってきますね。
 @の場合そのことを当然と思っている社員が多ければ事態はいつまでも改善できません。何とかして、仕入から売上・集金までの時間を短縮できないかと考え、出来ることなら売上代金を先にもらえないか、まで考え、実行できる社員がいれば、資金戦略は成功します。代金先払いでも売れている商売はあります。
 Aの状況が発生するのは営業マンが自分の売った商品代金の回収に関心がない場合が殆どです。この場合には、会社の組織や仕組みが「売るのは営業の仕事、集金は経理の仕事」と縦割りになっていることが原因しています。これを改善するには、「集金までが営業マンの仕事だ!」という方針を明確にして、回収状況が良い社員には報償があり、悪い社員には罰が与えられる制度を導入する必要があります。
 Bも同様に在庫に対する徹底的な意識改革が求められます。本当は在庫は無い方がよいのです。しかし、小売店では店に陳列していなければ売ることが出来なかったのです。IT革命で無店舗販売が出来るようになりましたが、注文をインターネットで取ってもすぐに発送する為にはどうしても在庫ゼロというわけにはいきません。だからこそ、社員に「出来れば在庫ゼロが理想だ!」と言う意識の徹底が求められるのです。在庫の圧縮は資金調達を楽にするばかりではなく、不要な在庫が増えた場合に発生する管理コストの削減にもつながり、二重に効果が上がるのです。
 また、同じ在庫資金でも、店舗の増設に関連して発生する必要最小限の在庫資金は短期資金として調達してはいけません。陳列在庫に必要な資金は店舗の建築費と同様に固定されてしまう資金ですから、短期に返済するような資金調達ではすぐに資金繰りが破綻してしまいます。
 このように運転資金に関しては特に社員の意識改革と協力が重要になってきます。すなわち、「運転資金戦略」は「社員教育戦略」なのです。

「納税資金」

 利益が出たから税金を払うのですから、本来はお金を借りる必要はないはずです。しかし出た利益に相当するお金は既に何処かに使われてしまっているからその分を調達しなければならないのです。更に、半年後には次の予定納税がやってくるのでそれまでの4〜6ヶ月に返済は終わっていなければなりません。予定納税資金も利益さえ出ていれば資金調達の必要がないのが本来の姿です。

  「賞与資金」

 我が国には、年に2度、固定的に賞与を支払う慣習があります。「賞与」という名前と現実が食い違ってきてから、賞与は毎月定期的に払う賃金と同じ性質になってしまったのです。ですから、利益の有無にかかわらず定期的に支払われているのです。そう考えると、利益が出る前に予め支払うのだから、当然資金は足りなくなるはずですね。もし利益の分配という意味を持った本来の「賞与」に戻せばこの資金を借入により調達する必要はなくなります。更に、支給時期も利益の回収を確認してからにすれば更に安全・確実に支払いが出来ます。

返さないでよいお金をいかに作るか

 資金調達というとすぐに「どうやって借りてくるか」と発想する傾向がいまだに多く残っていますが、それでは新しい時代は乗り切れません。運転資金の項で述べましたが、余計な資金を寝かさないことが一番の資金調達になることを肝に銘じてください。借りたお金はかならず返さなければなりません、それではいつまで経っても余裕は生まれません。短期資金の基本戦略は、「如何にして借りないで回すか」、これがポイントです。



中央会計事務所
税理士 細野知久
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