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JDL Avenue vol.41 2003年7月

経理実践トレーニング 資金戦略編 vol.9

資金運用期間から考える 2


貸したくても貸せない銀行

 金融庁が金融検査マニュアルに従って銀行の貸出先を検査することが原因して、いくら政府が中小企業向けの貸し出しを増やすように強制しても、貸し渋りや貸し剥がしが続いている。
 そんな中でも、あえて「前向きの資金需要」を掘り起こす努力をしている地域金融機関(信用組合・信用金庫や地方銀行※注1)があることは特筆に値する。それらの地域金融機関はお題目ではなくリレーションシップバンキングを実践している。支店長自らが中小企業に出向き、要注意先・要管理先に該当する企業の何処を改善すればよいかを見極め、積極的に関わり、改善の余地があれば融資はためらわない。
 あなたの地域にもそうした姿勢を持った地域金融機関が一つや二つはあるはずなので、あきらめずにそんな金融機関とは折衝を続けるべきだろう。


※注1
福岡銀行他 2003年4月30日・日本経済新聞
青和信用組合 2003年4月30日・日本経済新聞
多摩中央信用金庫 2003年4月28日・日本経済新聞
浜松信用金庫 2003年5月8日・NHKTV


長期資金

 長期資金の代表は設備投資資金だが、設備投資資金についての基本的な考え方は、設備投資に伴う減価償却と新たな利益の合計額と返済予定金額とのバランスをどう取るかに係っている。
 調達した資金の返済期間ないし償還期間が減価償却の耐用年数より長ければ資金には余裕が出来る。反対に耐用年数より短ければ、資金が窮屈になる。それを補う為には設備投資による新たな事業や経営効率の向上により収益を生みだし、その余剰資金で返済原資を賄う必要がある。

図−1 チェックポイントの例

 必要金額  1億円
 耐用年数 10年 → 減価償却額 約 900万円
 返済期間  7年 → 返済年額  約1,428万円
 新たな収益 5百万円
  ※900万円+500万円=1,400万円なんとか返済できる?



超長期資金

 超長期資金の代表に土地の取得資金があげられるが、土地は他の設備投資と異なり、減価償却がない。従って土地取得資金の調達は基本的には自己資金でなければならないが、借入金で調達するなら税引き後の純利益から弁済できなければならない。
 また新規に店舗を増やす際に必要な保証金や陳列在庫に必要な資金はその店舗を閉めない限り固定されてしまう資金なので、同様に超長期資金としての調達を考えなければならない。
 前回の短期資金の項目でも指摘したように、旧来の財務分析的な発想で、資金の使用目的が会計的に流動資産だから短期資金として調達すると単純に決めてはいけない場合があるので注意が必要だ。
 具体的には、固定長期適合比率は


 固定資産/(自己資本+長期借入金)×100

の算式で表されるが、この分子の中に上記のような資産を入れて計算するような考え方が必要とされる。

 超長期資金の調達方法の代表は「増資」であるが、その増資も資本金が増えすぎると交際費課税や地方税の均等割などの負担が増えることから、中小企業ではオーナー経営者が会社に貸し付けることで実質的に増資をしたのと同様の効果をもたらしている場合が多いのも実情である。このような場合も、財務分析的には事業主からの借入金は自己資本としてカウントすべきだろう。
 そのほかにも、超長期資金の調達例としては社員・取引先・友人知人を対象とした縁故募集による私募債で、償還時期に再度債券を発行することで実質的に半永久的に借りたままに出来る資金調達を実施しているケースも散見される。中には上記のオーナー経営者からの借入金を私募債に切り替えることで受取利息の所得税負担の軽減を図っているケースもある。
 また正式な私募債には至らないものの、企業の存続を図るため、利益の約半分を税金として流出させるよりは、利益部分の業績賞与を支給することで社員の志気を高め、その上で社員からその資金の一部を借り入れ事業資金を賄っているケースも出始めている。これは経営者と社員が運命共同体的な中小企業ならばこそ出来る発想だといえよう。


疑似資本金の必要性

 日本企業の借金依存体質は戦後50年間にわたり緩やかなインフレを前提として徐々に進行して、バブル経済気前には、有利子負債対キャッシュフロー倍率(※注2)は10倍を超えていた、更にバブル期に借金は増え続けた上にバブル経済の崩壊とともに利益率の低下を招きこの倍率は15倍を上回る水準まで達してしまった。
 バブル崩壊後の経営再建で全産業の水準は10倍を下回るところまで下がったが、中小企業では2001年度時点で17倍までにしか改善されていない。
 これは、無理のない話で、本来このような大きなルール変更は、5〜10年の期間をかけて行うべきものなのに、元々間接金融を中心に回っていた日本経済がある日突然ルールを変更したことによって起きた現象なのだから。
 現在の閉塞状態を打開する一つの方策として、「疑似資本金」としての超長期の事業資金を作ることを提案したい。中小企業の平均的な同倍率が17倍と言うことは、利益による借入金の返済は17年間必要だと言うことを意味する。であれば、中小企業対策として15年〜20年かけて返済する「疑似資本金」的な事業資金を創設し、現在の借入金を時間をかけて整理していき、その間に中小企業も「間接金融中心から直接金融中心へ」という時代への対応をすませるようにし向けるべきだと思うが、如何なものだろう。

資本金の資金調達コスト

 中小企業で間接金融から直接金融への移行が進まないだろうと思われる理由に、税制の影響があげられる。
 一つは増資による資金調達は、借入金による場合に比べ法人税等の負担が多くなることにある。
 例えば1億円の資金を投入して2千万円の利益を稼ぎ出し5%の利息を払う場合と同じく5%の配当を払う場合を比較してみよう。

図−2

 借入の場合
 稼得利益 支払利息  実効税率  税金
(2,000万円−500万円)×42%= 630万円

 差引残高は
 稼得利益  支払利息  税金    差引残高
    2,000万円−500万円-630万円=870万円



 増資の場合
 稼得利益 実効税率  税金
 2,000万円×42%= 840万円

 差引残高は
 稼得利益  税金   配当    差引残高
 2,000万円−840万円-500万円=660万円


 図のように、借入金の利息は稼ぎ出した利益から控除してから税金を計算するので税負担が減り差引残高が870万円である。それに引き替え増資で資金調達をして同額の配当をする場合は660万円と手元に残る資金が少なくなる。
 もう一つ配当課税のあり方も影響している。
 法人から法人に支払われる配当には「受取配当の益金不算入」制度が適用されることで、また法人から個人に支払われる配当には「配当控除」制度を適用することで、法人税を支払った後の利益の分配に更に税金をかけるのは二重課税だという批判に対処している形になっているが、それも不完全な形にしか過ぎない。
 中小企業における直接金融への移行を促進させ、日本の株式市場を活性化させたければ、配当課税を全面的に廃止するなど思い切った制度の変更をしなければならないと考えるのは筆者だけだろうか。


※注2:有利子負債対キャッシュフロー倍率
 (有利子負債をキャッシュフローで割った値)
有利子負債=短期借入金+長期借入金+社債+受取手形割引高
キャッシュフロー=当期純利益−(役員賞与+中間配当額+配当金)+減価償却費+特別減価償却費−特別損益



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税理士 細野知久
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