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JDL Avenue vol.43 2003年11月

経理実践トレーニング 資金戦略編 vol.11

資金調達先で考える 2


変化した金融機関の営業姿勢

 大手金融機関は、今までは貸出金利と調達金利の差額を基に、業務収益を稼ぎ出していたが、自己資本規制の強化により必然的に貸出金残高を少なくしようという動きが強まり、総資本利益率の向上に努めている。その表れとして各種の「手数料収入」を業務収益の柱にする傾向が強くなっている。
 具体例としては投資信託の窓口販売を始めとして、生命保険商品の売り込み、振込手数料の引き上げ、手形・小切手用紙の値上げなど枚挙にいとまがない。
 また、固定経費の削減のために、得意先係の中小企業へ訪問を止めてしまった金融機関が殆どである。つまり大手都市銀行は中小企業への小口貸出では採算がとれないので、優良顧客以外は出来るだけ関わらないようにしているのが現状である。

新しい資金調達形態とその実体

 これからは中小企業といえども、新しい時代の多様化した資金調達手法を検討する必要がある。
 それにはまず第一に、資金調達イコール銀行借入という既成概念を捨てることが必要である。
筆者の周辺では前回ご紹介した「少人数私募債」の他、匿名組合方式による映画制作ファンド、などが既に実施されている。
 東京都や大阪府が行っているCLO(ローン担保証券)方式による中小企業向け債券市場の創設、SPC(特別目的会社)方式による不動産の証券化、なども新しい中小企業金融の形として紹介されている。
(図−1  東京都CLO)
sikinsenryaku08_1.gif

 しかし現実に行われているCLOの動きを見ていると、中小企業にとっての新しい資金調達手法というよりは、金融機関にとって融資のための新商品という色合いが濃いように思える。
 金融機関にとっては、貸付金債権をそのまま保有することなくSPC(特別目的会社)に売却することから、貸借対照表の借方に残るはずの貸付金債権が無くなる(オフバランス)ことで総資産が膨れないので自己資本比率の低下を招かないで済むという利点がある。
 この方式は中小企業にとって従来のように担保を必要としないというものの、保証協会の保証を得なければならないという点で、従来の銀行貸付と大差がない。その上金利の面では決して安くなく、保証料も入れて考えると、無担保とは言えその負担は高いと言わざるを得ない。
 時代が変わったとはいえ、銀行系の金融機関の融資姿勢は未だに担保と個人保証中心主義から脱していない。そんな中でも一部の協同組織系金融機関は積極的にリスクを取りにゆく姿勢を見せ始めているので、自社の経営成績如何ではあるが、逆選別ができる状況も発生している。
 事業規模のさほど大きくない中小企業にとって、積極姿勢を見せている地域金融機関の活躍が大いに望まれる。
 一方、政府系金融機関の動きとしては、経済産業省が2004年度財政投融資要求としてまとめた案によれば、中小企業金融公庫と商工中金は「個人保証」を必要としない融資制度を本格的に検討し始めたようだ。
 詳細はまだ明らかではないが、融資限度額を1社あたり6億円としたいようだ。さらに国民生活金融公庫の融資では、無担保・無保証の創業資金貸し付けの限度額を現行の550万円から750万円に引き上げる予定で動いている模様だ。
(日本経済新聞平成15年8月29日)

地域内資金環流システムの試み

 国の新たな金融政策を待っていられないので、金融機関に頼らずに地方自治体と地元商工会が協力し合って、地域金融と経済を活性化させようという動きが出てきた。中小企業が自ら直接金融のシステムを切り開く兆しが現れてきている事例をご紹介しよう。
 全国商工会連合会で発行している、月間「商工会」平成15年8月号で紹介された、長野県高森町商工会が、少人数私募債を活用して「地域内資金環流型直接金融システム」を構築したのも、その一つの現れである。
(図−2 高森町の私募債活用例)
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 同商工会の担当者の話によれば地元企業17社から出資を受けてATF社(アルプストラストファンド株式会社)を設立し、ATF社はファンディング・経営コンサルティング・インキュベーション・自治体連携の各事業を行い、商工会と協力して会員企業の総合的なバックアップ体制を作り出しているという。
 高森町の場合、東京のような大都会と異なり、地域で生まれ育った経営者の人となりが分かっているだけに少人数私募債を発行するのには好条件が整っていると言える。
 また、私募債を購入した人は自然とその企業の応援団となり売上の向上にもつながると期待されているようだ。
 こうした動きは他でも見られるが、レストランやパン屋さん・また日常の買い回り品を扱う小売店などが私募債の利息に加えて株主優待のような仕組みを盛り込んだりすることで更に新しい業務展開をすることが出来る。
 この試みは、まさに現代を代表する二人の哲学者が対談の中で次のように語る新しい時代にあるべき姿を象徴しているといえばほめすぎだろうか。
  『真の創造性を発揮するには、旧来の枠組みをすべて取り払うことです。難しい条件の検討を含め、冷静なシミュレーションは後でいいから、まずは制限を設けることなく、自由な発想を尊重することが大切です。それなのに自由な発想が出てくる前から、制約条件にばかり精通するようになる、またそのような人材が尊ばれるのが日本社会の現状です。今日本のあらゆる分野に、そのような自由な発想を萎縮させる構造がはびこっている、これを根本から改革すべきなのでしょう。』(稲森和夫)
「新しい哲学を語る」梅原猛・稲盛和夫196ページ
PHP研究所2003年1月8日第1版第1刷発行

 こうした実例は新たなスポンサー(株主)による『日本的中小企業型資本主義』(*注)の形態が発生し定着することを想起させ、期待させられる。
 私募債を購入した町民が、企業にとってお客様であり株主である立場のファンとなり、真の意味での開かれた株式会社が中央の証券市場を介さずに、日本中の小さな山村や農村・漁村で自然発生的にどんどん出来てくるのではないだろうか。
 またそれを大いに期待したい。

*注JDLAvenue 2002年1月号掲載分 経理実践トレーニング経営計画編vol.20参照

中央会計事務所
税理士 細野知久
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