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税のワンポイントアドバイス
旬刊国税解説速報 (平成14年 4月28日)掲載分

税務調査で学ぶ税の原則    相続税……相続財産(土地評価関係)
税理士 細野知久
『ポイント』
 相続税における土地の評価に関しては
@相続開始時点の時価をいかに計算するか
A相続開始時点の利用状況がどうなっていたか
の事実認定の二つが大きな要素になります。

1.事例その1(広大地・不整形地)・時価

調査官:「申告によるとA土地とB土地の評価が財産評価基本通達による評価と大きく差がありますが、この評価の根拠を説明してください」

税理士:「おっしゃるとおりその2つの土地は財産評価基本通達による評価はしていません。」「A土地は、相続開始以前から開発業者から売買の話しが来ていましたが、買付申込書の金額は、通達による評価額を大きく下回っていました。相続開始後まもなく売買が成立しましたが、その金額が基礎になっています。代理人に弁護士を立てて契約をしましたが、その際に弁護士が売買金額の適正さを確認するために不動産鑑定士の鑑定評価を取って先方と合意して契約が成立しました。」

税理士:「B土地は評価通達で不整形地の評価をしてみましたが、売ると仮定した場合の価額の倍以上になります。その土地は申告に当たり不動産鑑定士の評価を取ってあります。」

納税者:「その土地は、自宅裏にあり駐車場や資材置き場として貸してありますが、いざ売却となったらとても通達による評価額では売れないと、不動産業者から指摘されました。」「申告期限後に実際に売却したのですがその鑑定評価額にもなりませんでした。出来ることなら売れた金額に更正してもらいたい位ですよ。」

『回答・解説』

 相続税の税務調査で土地の評価に関して指摘を受けることが多くありますが、そのときに対応する税理士や納税者として基本的な立場を明確にしておくことが大切です。
 その基本とは、相続財産の評価の原則は「時価」とされていることです。(相法22条)
 相続税の申告をするに当たって、多くの場合、税理士は「財産評価基本通達」を拠り所として土地の評価も行います。
 しかし、財産評価基本通達の本来の役割は、国税庁長官が下級官庁である国税局長に、「相続税及び贈与税の課税価格の計算の基礎となる財産の評価に関する基本的な取扱い」を定めて「これにより取り扱う」ことを通達(命令)したものです。
 したがって、公務員である国税当局の各官吏はこの通達に従わない場合には「命令違反」となりますので、その立場で指摘するのは当然のことなのです。

 一方、納税者の立場では相続税法第22条による「時価」が唯一の拠り所となるので、「財産基本通達」による評価が「時価」を反映していないと考える場合には何らかの合理的な方法により適正な時価を算出する必要が生じます。不動産鑑定士による土地の時価評価は、「合理的な方法による時価を算出する」手法の内の一つなのです。
 ここ数年のように地価が下がり続けている状況では、個別性の高い土地という特殊な財産の相続開始時点での「時価」がいくらかという問題が大きな比重を占めています。

2.事例その2(小規模宅地等)・利用状況

調査官:「小規模宅地等の特例を適用した土地の相続開始時の利用状況等を確認したいのですが。」

税理士:「特例の適用をした土地は2つありますが、C土地は被相続人(甲)が自宅として使用していました。D土地は甲が社長をしていた会社が使っていた土地です。」

調査官:「そのことを証明する書類の添付がありませんので、関係書類で確認できるものはありませんか?」「甲さんの住民票は別のところにあったようですが…、建物はどなたの所有ですか?」

税理士:「甲は特別養護老人ホームに入居していたのでそちらに住民票はありました。建物は甲と長男(乙)の共有で、乙が同居していました。」
調査官:「会社の株式を相続された乙さんは会社では役員でしたか?この会社は現在どのような状況ですか?」
税理士:「当時は取締役で今は代表取締役です。会社は今でもそこでやっています。」
それらの事柄は申告時にはすべてチェック済みなのですが、申告書に関係書類を添付していなかったことで、調査官は疑問を持ったようです。
税理士:「それらのことは申告時にすべてチェックしてありますので、書類は後でお送りします。」

『回答・解説』
 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例は租税特別措置法による相続財産の評価の特例です。その適用要件は法律にかなり詳細に定められていますが、それでも疑問が残る部分については通達が発遣されています。(措法69条の4及び関連通達)

 これは、上記の「時価」の問題とは別の観点から見なければならない評価の問題です。
 この特例の適用による評価減額割合が大きいだけに適用要件のチェックは慎重を要します。適用要件のチェックに当たっては、納税者の話だけで判断せず、その事実を証明する出来る限りの資料を集め、客観的に「特定事業用」または「特定居住用」等であることを証明できるようにしておきましょう。

『留意点』
 特例の適用に当たり、事実認定に関わる部分で、申告前にその要件を満たしているか否かのチェックが重要なのは言うまでもありませんが、その際に点検した書類を申告書に添付するなどして、税務調査以前に書面で解決できることはしておきましょう。
 小規模宅地の等評価減の特例とは離れますが、財産評価基本通達にしたがって土地の評価をする場合に、通達が規定している要件を満たしていない場合はどうするのかという疑問が残ります。その場合、基本的には通達の内容に沿って評価することになります。
 更に、利用状況によっては「貸家建付地」として評価できる駐車場用地の例のように税務当局の見解が通達ではなく質疑応答集などで示されている評価の方法を採用して申告するときも、その例示に従わざるを得ないことになりますが、納税者の立場でその評価額がどうしても納得出来ない場合には、やはり、原則に戻って税務当局に対しても説得力のある「時価」を適正に算出する方法を模索する必要があるでしょう。(相法22条)

(評価の原則)
相続税法第22条  この章で特別の定のあるものを除く外、相続、遺贈又は贈与に因り取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。




中央会計事務所
税理士 細野知久
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