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税のワンポイントアドバイス

ぎょうせい・月刊「税理」平成13年12月号
P.10 実務の焦点 掲載分

給与所得者の譲渡損失の繰越控除について


はじめに
 企業経営者の中で過去の業績の良かった時期に個人で不動産を購入し、貸し付けていたケースは多く見受けられる。ところが、ここへ来て急速に業績が悪化したことから貸付不動産や自宅を売却しその資金を事業資金へ投入したいという要望が聞かれる。所有不動産の損切りをしてでも売却をし、資金を確保したい、そして同時に給与所得と損益通算することで税金の還付を受けたいという希望を持って相談に来られる。
 そのメリットを充分に活用するにはいくつかの事項に注意を払う必要が生じる。

白色申告者の損失
 一般的に新事業の起業家には個人事業ではなく始めから会社を興し給与所得者になるケースが多い。税理士・会計士の関与する事業所得者の殆どは青色申告を選択していると思うが、一方では給与所得者で不動産所得を有する納税者の中には青色申告を選択していない場合が散見される。白色申告の場合には、所有不動産を売却して譲渡損失が発生してもその年度の給与所得などと損益通算が出来るだけで、通算しきれない純損失を翌年に繰越控除することは出来ない。

青色申告者の損失
 不動産所得があって青色申告をしていれば、所有資産の売却による損失は損益通算をして、更に損失が残れば繰越控除できるが、その売却の順序が違っただけで、譲渡損失の一部が繰越控除が出来なくなる事態が発生するので注意を要する。
具体例で解説する。

所有不動産
@アパート購入金額7千万円  売却金額3千万円
A自 宅 購入金額 1億円  売却金額5千万円
給与所得 3千万円

このような場合に、アパートを先に売却し、更に翌年になって自宅を売却することを想定して頂きたい。それでは、自宅の譲渡損失が繰越控除できず、還付を受けられる金額が少なくなり、結果として売却による資金調達額が少なくなってしまう。
 給与所得の他に不動産所得があることで青色申告となっている場合に、その起因となる不動産を売却すると不動産所得が無くなる。その他に事業所得・山林所得が無ければ青色申告の要件を欠くこととなり、翌年は当然給与所得だけの白色申告になってしまう。
 そうなってから自宅を売却し譲渡損失が出ても、給与所得を上回る損失が発生すれば、その部分は繰越控除は出来なくなる。
 自宅の売却を後にしたいという気持ちは分かるが、明らかに双方とも売却損が生じ、両方ともいずれ売却をしなければならないなら、自宅から売却をする方が繰越控除がフルに使えて手許に残る資金は多くなる。
 上記に似た例で両方とも同一年度に売却する場合、仮にどちらかに譲渡益が出ても譲渡所得に損失が残り、その損失が給与所得を上回れば、その損失の金額は青色申告書を提出した年度の損失となるので、次年度に繰越控除が可能となる。

留意点
 上記のように、青色申告書を提出した年度の譲渡損失がある場合には、その後の年度が青色申告でなくなっても純損失の繰越控除ができる。その場合には、その純損失の生じた年分の所得税について期限内に青色(損失)申告書を提出するとともに、その後の各年分について連続して確定申告書を提出していなければ適用されないので留意する。

右山研究グループ
税理士 細野知久



中央会計事務所
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