金融業界の今日と明日−そのA 加速する金融再編と淘汰 SYRIEZ 2000年6月号掲載分
先日、経営者向けの雑誌の出版社 から取材を受けました。
テーマは「金融機関の融資審査の実 情」を問うというものです。即ち、中 小企業経営者の実感から銀行の審査に 独自性、主体性が失われていることを
問題点とするものでした。
これに対する回答をひと言で言えば 「金融機関の審査基準はいまや金融監 督庁の『検査マニュアル』で、独自性 などあるハズはない。金融機関は主体
性をもってはいけない」というもので す。実際、検査マニュアルと金融機関 の自主的な考え方の違いは次の2点の 解釈に顕著に表れています。
1つ目は実体の利益です。実体利益 とは決算音上の損益(表面的利益)で はなく減価償却、売掛債権、在庫、貸 付金等の内容を吟味し、特に含み損を
明らかにした本物の損益を追求するこ とです。
2つ目は債務超過企業の経営再建計 画ですが、それ自体の説明は不要でし ょう。
この2点について、検査の現場では 監督庁と金融機関の考え方に致命的な 隔たりがありました。とりわけ下位の 業態である信金の取引先では埋めよう
のない溝となりました。
全国の企業の70%が赤字経営で中小 企業の約30%は債務超過という状況で す。しかも多くの信金の取引企業では そもそも経営計画など持たない企業が
大半です。監督庁が求める基準に応え ることは中小の金融機関には極めて困 難でした。
その結果、検査を受けると金融機関 の自己査定と監督庁の査定では自己資 本比率が都銀で1%以上、信金に至っ ては2%以上の差が生まれたのです。
この7月から信用組合も検査の洗礼を うけます。検査する側もされる側も呆然 とするでしょう。
検査結果を受けて金融機関は自らの 存続のための具体的再建計画の練り直 しが必要となったのです。再建計画に 説得力がなければ淘汰(破綻)の道し
か待っていないのです。
ビッグバンのスタートまで1年足 らずとなりました。メガバンク に代表される大型の合従連衡や複数の 信金の合併はこうして生まれたのです。
これからの1年間に特に信金、信組を 中心に再編は加速されます。東京都内 に現在49信金ありますが、25信金程度 に集約されます。
全国では約390の信金が200以 下になるのです。信組については想像 がつきません。この金融業界の激震の 陰で進められているのが融資先の選別
なのです。
長年の親密取引先であっても、金融 監督庁の検査マニュアルに則って審査 をすると取引を継続できない企業は切 り捨てざるを得ません。また再編を控
えて不安な融資先、お荷物になりそう な取引先は容赦なく緑を断つことにな るのです。
片や、ほんの一部の優良企業に対し ては、今度は貸し出しセールスが集中 し始めました。
某有名女優が家電製品のコマーシャ ルで使った言葉が印象に残っています。 「21世紀に持っていくもの、20世紀に 置いていくもの」。
これは図らずも選別融資と一致しま す。経営者は荒波に呑まれてはいけま せん。そして会計人こそが知恵を出し て指導、助言しなければならないとき
なのです。
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