金融業界の今日と明日−そのC 金融機関とどう付き合うべきか SYRIEZ 2000年8月号掲載分
前回、破綻懸念先と区分された企業は、金融機関からの支援は期待 不可能であると指摘しました。この金融機関側の考えとこれにどう企業が対
処すべきかの実例を示すことにします。
次に掲げた談話は、私が会社再建のために関与している企業と取引を行な っている、ある信用金庫の支店長が経営者に語った言葉です。
支店長は再建途上企業のA社長と決算後の面談で次のようなことを語りま した。
「ひどい決算内容ですね。実際、金融監督庁の監査においてAさんの会社の 件は1時間を割いての論議となりました。まず着眼点は『自己資本比率』で
す。『債務超過』と同意義ですが、これを『いかにして』と『どれくらいの期 間』でゼロにするかがポイントになったのです。勝手ながら我々なりに中期
計画を作らせていただき、第3分類から第2分類にさせていただきました。 我々の主張の基本は『あれだけの設備をもって着々と手を打たれれば、必
ずや5年ないしは7年で債務超過解消はなされると信じる』というものです。 しかし、今の金融監督庁の監査は『指導』ではなく完全に『行政』に転じて
います。中期計画を毎年チェックし、1年後にその達成率が85%を割れば、 我々の手ではどうしようもない世界に陥ります。我々が描いた計画は期待を
込めた、数字だけで作ったものですから、是非中期計画の見直しをお願いし たいのです。
また当庫は信金トップを切って監査を受けたわけですが、都銀さん へもまったく同等の「分類査定」で監査が入ります。Aさんの会社とお取 引のあるB銀行には4月か遅くとも5月には監査が入るでしょう。その時A
さんの会社が対象となり、第3分類の格付けとなれば、当然ながら当庫の査 定に影響しますし、ひいては貸出し・返済の姿勢を変えざるを得なくなりま
す。メインバンクさんとは中期計画のすり合わせを十分に行なってください」
さらに支店長は言葉を続けました。
「いつのまにか『灰色分類』という言葉が新聞から消えたでしょう。それは 金融監督庁が、完全に白か黒かの世界を追求しているからなのです。『公的資
金をなぜ金融機関だけが受けられるのか』という産業界全体の疑問に対し、 『公的資金は金融機関を通じて各企業に流れる』ことを示すために、金融機
関そのものの査定も厳しくかつ統一性あるものが求められています。だから こそ(融資先の査定が)金融機関ごとに異なる基準であってはならないとい
うわけなのです」
そしてA社長には最後に次の言葉を残して面談は終わりました。
「次年度予算編成で追われていますが、4月に入ったら早急に工場を訪問させ ていただこうと思っています。その時に言いたいことを言わせていただいて、
Aさんと論議させていただきたいと考えています。また、宮本先生にも是非 お会いしたいですね。『もはや、リスケジュール云々の世界ではどうしようも
ない時代に入った』と感じていますので…」
約1年前のことですが、この面談の後、A社長の再建途上会社は、経営改 善計画の練り直しを行ないました。
支店長の意見は、厳しい指摘の中にも企業がどうすべきかを明らかにする 示唆に富むものとして今では感謝の意を表しています。
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