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宮本孝(みやもと たかし) 1946年福岡県生まれ。九州大学法学部卒。 22年間第一勧業銀行に勤務した後、大手ノンバンクの役員を経て、現在、経営コンサルタント会社 (株)日本ビジネスクラブ代表取締役 TEL03-5473-7088 FAX03-5473-7570 E-mail nbclub@po.mmm.ne.jp マスコミから”中小企業の駆け込み寺”と称され、関与した企業は500社におよぶ。 全国各地で講演活動のかたわら、テレビ、新聞、雑誌等でも主張を展開し話題を呼んでいる。 とりわけNHKの「クローズアップ現代」、フジテレビ「ニュースジャパン−金融悲鳴列島」での特集は大きな反響があった。 東京中小企業家同友会政策委員として活動し、金融問題のスペシャリストとして知られている。 主な著書に「借金整理マニュアル」「今こそ銀行取引を変えなさい」「続 商工ローン 借りてはいけない」(いずれもWAVE出版)などがある。その他著書多数。 話題のひと■ THE BUSINESS SUPPORT 2002年3月号掲載分 宮本孝(日本ジネスクラブ代表) 淘汰されるべきではない企業の 窮地を救うリスケジュール 貸し渋りには「返し渋り」(?)で対抗 ”3月危機”を前に、銀行は自己防衛に追われ、前向きの融資業務など眼中にないかのようだ。 本業の健全性がリスケの条件 私は長く第一勧業銀行に勤めて、10年前に退職しました。 その後は、借入金の返済に苦しむ中小企業の相談を受けて、金融機関に対してリスケジュール (略称リスケ・返済計画の見直し)を要請し、折衝するという仕事をしてきました。 誤解してほしくないのは、リスケジュールの対象となるのは、あくまでも「借入金の返済 を見直すことで前向きの投資資金が確保でき、それによって業績回復が見込める」企業です。 単に経営破綻を先延ばしするための方策ではありません。 ですから、まず経営改善計画の指導が前提で、その後にリスケの折衝に入ります。 現在までに私が関わった会社は約480社、コンサルティングだけでお会いした債務者を含 めれば1,700社にのぼるでしょう。過去、リスケの成功率は99%に達します。 昨年の秋口からとくに相談にみえる方が多く、九月など家に帰ったのは一日だけ。29日間 働きづめでした。それだけ銀行の仕打ちがドライで冷たくなっている。 ですから、ついに救えなかったケースもあります。 A社としましょうか。富士通やNTTなどにIT開連の製品を企画・提案し、そのアイデア と技術が評価されれば、試作品を納める。ヘッドワークで仕事をしてきた会社で、技術力は あっても担保はありません。 例えば、製品企画が採用されて、1億円の契約が成立したとする。材料費、人件費などで先行 して支払いが発生します。A社は3,000万円は自己調達できる。7,000万円不足だが、 銀行は売掛金見合いで、何年にもわたってこの7,000万円を融資してきた。これをプロ ジエクト・ファイナンス(ひも付融資)といいます。 ところが銀行は手のひらを返します。ある日突然、、「これからはこの貸し方はできない。ただ ちに借入を返せ」と一方的に通告してきました。次の商売はするな、潰れろということです。 A社はその後一年がんばりましたが、万策尽きて現在破産手続きに入っています。 銀行は禁じ手を使うのか いま銀行はどこも崖っぷちに立たされています。東京三菱と三井住友はまだ崖の上にいます が、他のグループは、崖の縁から鉄板を延長してもらって、辛うじて崖の上に乗っている格好 です。鉄板から半分転がり落ちて指先でぶら下がっている銀行だって少なくありません。 「2〜3年内で破綻懸念先以下を最終処理せよ」「すべての債務者を厳格に査定せよ」という 金融政策が圧力となり、足を引っ張っているのです。 そこで、どういうことが行われているか。かりに銀行が貸し出している1億のうち担保が 2,000万、8,000万は無担保状態になっているとします。体力のある銀行は担保がつ いたまま、外資系のファンドにたたき売っている。 外資はこれを1,500万で買いにきます。銀行側には8,500万の損失が立ちますが、税 務効果を勘案すれはせいぜい4,000万だということで、一気に処理してしまう。銀行は破 綻懸念の取引先と縁が切れてスッキリします。 買った外資の方は、1,500万だったら担保物件だけで黙っていても500万が儲かる。う まくやれば3,000万、 4,000万の回収ができるかもしれない。外資にとっても大変魅力 のあるヒジネスなんです。 しかし、崖っぷちの銀行はそうはいかない。追加の担保はないか、保証人はどうか、あるい は保証協会付の融資に振り替えられないか。100万でも200万でも損失を最小限に抑える ために万策を尽くしている。そのためには相当えげつないことが行われています。 私が心配しているのは、今後銀行が”禁じ手”を使ってくるのではないかということです。 貸し付け専用手形というものがあります。例えば、2,000万円の銀行宛の手形を差し出させて 貸し出す。期日がきたら返済するか、金利を払って書き換えてもらう。従来は期日が経過したか らといって、すぐに引導を渡されることはありませんでした。 ところが、平成9年に手形交換所規則が変更になって、貸付専用手形でも期日が経過したら 不渡り報告が出せるようになったのです。これをやられたら企業の息の根は止まります。 あるいは、銀行(債権者)による「債務者の破産宣告」、「債務者の売掛債権の仮差押」。商工ロー ンまがいの行為ですが、現在の金融政策を推し進めていけば、いつ起こっても不思議はない。少な くとも金融関係者の間で話題に上りつつあるということは認識しておいた方がいいでしょう。 リスケジュールは銀行にもメリット 貸し渋りという表現が使われて久しいですね。しかし、実は新規に融資を申し込んで、あん たのところは貸せないよ、と断られたといって嘆く債務者は少ない。圧倒的に多いのが借り換え の拒否なんです。 売上が50で、仕入原価が30、経費が10とすれば、本来なら10が残る。しかし、この 残った10で20の元利金を返済することは不可能です。10足りない。この部分を、いまま では金融機関がカバーしてくれていました。これが借り換え、銀行マンの用語でいう金繰り融資 です。銀行に10をプラスしてもらっていたのが従来の金融取引だったわけです。 最近は金融機関がこの10をプラスしてくれなくなった。いままで返した分くらいは貸して くれるだろうと思っても、貸してくれなくなった。じゃあ、残った10の範囲内で返すしかない ね、これがリスケなんです。 貸し渋りには返し渋りです。
「表」(銀行別返済計画一覧)をみてください。これはリスケジュールの実例です。経営改善計画を 示した上で、あらためて各金融機関と返済計画の変更という契約を交わしたものです。 現状の返済計画ではトータル126万円ですが、これを65万円に収めました。この会社に とっては返済可能な、振れる限りの袖を振った結果です。 みていただくとわかります、金融機関の返済額にアクセントをつけています。大変冷た い仕打ちを受けたメーンバンクには相当厳しい要求をしています。逆にメーンバンクに捨てら れて、ピンチのときに割引を請け負ってくれたA信用金庫は、5万円しか削っていない。 国民生活金融公庫に至っては一円も削っていない。国金さんは、例えば1,000万円を借り た場合、500万円まで返済すれば700万円の復活をしてくれるからです。公の金融機関は 実績をみてくれるのです。 いま、特殊法人の問題が取り沙汰されていますが、保証協会を含めて、公的機関の存在なく して、中小企業の金融は語れません。それが実情ですよ。 もちろん、返済計画の変更を申し入れるには、売上の拡大や経費節減など、最大限の経営努力 を具体的に提示します。 変更を申し入れた時点では200年、300年返済という数字が出てきます。しかし、この 計画を認めてもらえれば、来期は50の売上を55に、30の原価を28に、販管費の10も 8にすることで、返済原資はもっと増えます。だから、5年後には200年返済を10年返 済にできますよ、というのがリスケなのです。 金融機関にもメリットはある。破綻懸念先だったものを要管理、要注意先レベルに引き上げられます。実際に、リスケを 認めてもらった結果、5年で負の遺産を整理して、正常先に復活したケースもあるんです。 ただし、繰り返しますが、本業で利益が出せる可能性があることが前提です。救うべき健全 な債務者を救済するのが私の使命だと思っています。 |
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