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中小企業金融問題の第一人者宮本孝氏の直言と経営指南
  宮本孝の金融教室


宮本孝(みやもと たかし) 1946年福岡県生まれ。九州大学法学部卒。
(株)日本ビジネスクラブ代表取締役 TEL03-5473-7088
マスコミから”中小企業の駆け込み寺”と称され、関与企業は400社以上。著書多数。
■経営者のための金融教室4■ 戦略経営者  2002年9月号 掲載分

  宮本孝(日本ジネスクラブ代表)

逆転の資金繰り〜「リスケジュール」その@

貸し渋りとは"借換の拒否"

 リスケジュール(リスケ)を分り易く説明するために次の算式をいつも使用しています。
 50−30−10−20=マイナス10
 50が売上回収金、30が原価(仕入原価または製造原価)、10が販管費の企業が20の借入返済を行って10の資金不足になる姿を表わす算式です。
従来はこのような返済を行ってもマイナス10にならないように銀行が返済実績20の範囲内ならば貸出に応じて資金不足を解消してくれました。この貸出を「借換」と呼び銀行員が行う稟議では平易なものとされていました。"貸し渋り"という言葉がすっかり流行語になりましたが、実は貸し渋りの典型はこの「借換」の拒否なのです。

 本来売上から原価と経費を差し引いて残った現金、10の範囲で借入返済を行う(これが"収益返済"です)のであれば資金不足は起りません。しかし従来は収益力を上回る借入返済を約束してもキチンと返済をしていれば、その結果資金不足になっても銀行が借換えに応じてくれるという信頼を銀行に対して抱いていたため企業は収益力以上の返済を行ってきたのです。これを"金繰り返済"と言います。金融政策で追い込まれた銀行は債務者企業のこの信頼を裏切らざるを得なくなりました。企業経営者はこの銀行の姿勢の変化に易々諾々と従っていては仕事をまじめにやっていても資金繰りで破綻することになります。

 これを回避するために唯一残された方策が今回と次回に述べるリスケなのです。

 冒頭の算式で言えば20の借入返済を10以内に変更し"金繰り返済"から"収益返済"に改めるのです。リスケは返済能力の範囲内での借入返済を主張するものですから踏み倒しとは根本的に違います。

「金繰り返済」から「収益返済」へ

 リスケは大企業を再建する方策として銀行主導で以前から行われてきました。中小企業を対象としたリスケが一般化したのは数年前からです。大企業の場合との決定的な違いはリスケ実行中は新規融資は期待できないことです。もっとも、リスケを決断しなければならない企業は、既に新規融資は借換えも含めて困難な場合が大半ですから大差はないと割り切ることが必要です。

 リスケを銀行と折衝する場合に最も大切なことは前回述べた経営計画の内容です。

 冒頭の算式に当てはめれば、50の売上は今後どうなるのか。新規商談や新製品がいつ、どれだけ売上に寄与し、どれだけ売上が増加するのか、あるいは減少するのかを取引先別の売上計画、部門別、商品別の売上計画で具体的に示すことが必要です。同様に30の原価はどうなるのか、10の販管費については具体的にどんな策で節減を図るのかを示さなければなりません。その結果、策定された経営計画が客観的に信頼に値するものと評価され、銀行の納得を得ることがリスケの交渉には欠かせません。

 今の金融庁の考え方はリスケを実行する債務者は要注意貸出先に区分することとなっています。経営計画に信頼が持てない場合は要管理先やさらに破綻懸念先の区分もあり得ます。どんな債務者区分となるかで債務者も"天国と地獄"ほどの差異を味わうことになります。銀行も企業が示す経営計画によってリスケに応じるか否か最終的な判断をしなければなりません。この点では債務者と銀行の利害は一致します。


中央会計事務所
税理士 細野知久
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